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田村 太郎 さん
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プロフィール
兵庫県生まれ。高校卒業後、ヨーロッパ、アフリカ、南米などを旅する。在日フィリピン人向けのレンタルビデオ店勤務を経て、1995年1月阪神大震災発生直後、「外国人地震情報センター」を設立。同年10月、名称を「多文化共生センター」に変更。現在、同センター代表。
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(多文化共生センター代表)
増え続ける在日外国人の現状と課題
2001年9月6日
第3回多民族共生人権啓発セミナー
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私は阪神大震災の前、2年ほど日本在住のフィリピン人向けのビデオ店で働いていました。その仕事をしている時、たびたびお客さんから相談を受けました。その人たちが日本語を学ぶ機会がないこと、生活や家族のことで困っても地域との接点がなく、相談できる人がいないことを知りました。
そこへ震災です。どうしていいかわからない外国人がたくさんいる。何かできないかと思って、7名の通訳ボランティアを集めて、「何でもあなたの言語で相談を受けます」というホットラインを開設しました。震災2日後から始めましたが、電話がじゃんじゃん鳴るんです。それでボランティアも対応言語も増やしました。
震災後の半年で、約1,000件の相談を受けました。やがて震災から日がたつにつれ、日常のことに関する相談が増えていきました。歯が痛いとか、妊娠したとか。震災でなくても起こることですね。
多言語のサービスは日常から必要だとわかり、仲間と一緒に作ったのが「多文化共生センター」です。
いま地球と地域で起こっていること
2000年の統計で外国人登録者は168万6,400人。1990年代に入ってから、毎年3〜5万人ずつ増え続けています。1位は今も韓国・朝鮮籍の人ですが、1995年に韓国・朝鮮籍と他の国籍の人の比率が逆転しました。注目してほしいのは、構成が多様だということ。中国33万人、ブラジル25万人。次がフィリピンで14万人、ペルーが4万人です。
国籍も言語も多様化しています。英語圏以外から来た人が増えているのに、この人たちは自分の言語で情報を受けられません。地震の時に大いに困ったのもこういう人たちです。
よく「日本は労働力が足りない」とか言いますが、「労働力」じゃなくて人間ですからね。ご飯も食べれば恋愛・結婚もします。病気も怪我もします。家族と一緒に暮らしたいから家族を呼びます。昔は単身者が多かったのですが、今は定住化が進んでいます。
自動車産業等の人手不足を背景に、法務省が1990年に通達を出して以降、ブラジル、ペルーから日系人がどんどんやってきました。「中国残留者」とその子孫も急増しています。
今、日本の小中学校に通う外国人の子どもで、日本語教育が必要な子どもが約1万8,000人いて、年々増えています。大阪市内の保育所の8割に、少なくとも1人は日本語のわからない保護者が子どもを通わせています。保護者と先生がコミュニケーションできない、ということが各地で起こっています。
経済のグローバル化がいわれ、モノ、お金、人の動きが加速しています。私は昔サハラ砂漠をヒッチハイクで旅したことがありますが、ハエもとんでいないところでもトヨタの車が走り、コカコーラが売られていました。モノの流通ってすごいですね。特に冷戦崩壊後は、資本がどんどん国境を越え、人も動いています。
なぜ上海で工場を建てたら安い労働力が安定供給されるのかといえば、農村から来た人がいるから。かれらはもっといい稼ぎ口があったら、他に行きます。その動きが国内で収まらない。農村にも欧米や日本の企業が進出し、従来の農業・伝統産業が崩壊し、人が都会に流れる。世界全体で、もうすぐ都市人口が農村人口を上回ります。
地球規模で見たら、外国人が日本に来るというより、「農村が崩壊して都市に人口が集中している」んですよ。この人口移動は環境問題と同じで、地球規模でつながってますから、自分だけ無縁ということはありえない。
日本で暮らす外国人が抱える課題
今、日本で暮らす外国人の定住化と多様化が進んでいます。子どもが生まれたり、家族を呼び寄せたり、子どもが卒業して就職したり、あるいはみなさんの会社の消費者となる。だから、妊娠・出産から高齢者問題、お葬式の問題まで起こっています。
外国人が直面する課題を、三つの「かべ」で分析しています。まず「ことばのかべ」。 英語圏以外からの来日者が増えているのに、自治体を含め対応がほとんど無い。みなさんの会社のお客様窓口にも、日本語以外の相談が来ていませんか。日本語がわからずに事故を起こした場合どうするのか等、これから課題になるでしょう。
日本では「自分のことばを話す権利」が大事にされていません。それから日本語を習得する機会が非常に少ないのも問題です。関西には、被差別部落の方や在日韓国・朝鮮人の高齢者の方のための識字教室や夜間中学があって、新しくきた外国人の受け皿になってます。ボランティアが運営する教室もある。でも絶望的に不十分です。
米国だと、ESL(第二言語としての英語)を学ぶカリキュラムがある。欧米では、移民を受け入れてたら、教育や福祉もことばも保障するという発想がありますが、日本はまだまだです。工場で外国人を雇うとしても、日本語を覚える機会があれば、技術も熟練した労働者となっていくはずなのに、そうなってない。資格や試験からも除外されています。この人たちも学ぶ機会があれば、もっと能力を発揮できると思います。
次に「制度のかべ」です。外国人の在留資格を決めるのが「出入国管理および難民認定法」です。「活動に関する在留資格」を持つ外国人は、その活動以外してはいけないことになっている。モンゴル出身のお相撲さんは、「力士」としての滞在だから、相撲をやめてチャンコ鍋屋をやりたくてもできない。留学生も、留学が終わったら帰って下さいと言われる。この厳しさが、外国人の日本での生活にかなりの影響を与えています。
これと別の「居住に関する資格」は、日本との関係で認められている資格です。「在日」、元インドシナ難民の方、日系人、日本人の配偶者などです。実際、在留資格が何であろうと、資格がなかろうと、社会保険は受けられます。日本で働いて怪我をしたら、労災認定を受けられるし、賃金不払いなら補償を受けられる。
労働基準法には国籍条項がないのに、情報不足と偏見から、運用面で外国人がはずされているケースが多いです。
最後に「心のかべ」について。地球規模で起きている大きな流れについて、ほとんどの人は知りません。「日本に行けば稼ぎがいいから、勝手に来てる」と思ってる。でも今の時代、世界中に私たちの暮らしが影響を及ぼしていて、私たちの日常生活をうみだすメカニズムに応じて人が動いているという認識をどう持ってもらうかが、大きなポイントです。
文化がちがう人たちとどうやって生活していくか、ということを教育の中に入れていくことも大切です。問題は、偏った情報から生まれている偏見ですね。「外国人が増えたら犯罪が増える」等とまことしやかに言われますが、嘘です。件数は増えているとしても、母数も増えているからで、比率が増えてるわけじゃない。
今、私たちの地域社会は外国人を必要としています。例えば少年犯罪が増えたから少年はどっか行ってくれ、ということにはならないでしょう。同じです。新聞の報道も偏ってますので、そこをどう注目していくのかが、大きなポイントです。偏った報道によって心のかべが増強されていくと感じています。
この三つのかべに囲まれて生活している、というのが外国人の現状だと思っています。 ただ、だからといって外国人はみんな大変で、暗い顔をして暮らしているかというとそうじゃない。多くの人は楽しく生活してます。私もよく一緒に飲んだり、踊りに行ったりします。ところが、ひとたび何か起こったら、日本国籍者や日本語がわかる人と全然状況が違う。そこに大きなかべが立ちはだかっているんですね。
多文化共生社会に向けて
多文化多民族の課題に対し何をしていけばいいのか、という話をします。「共生」とはどういうことか。「差別がない」だけじゃなく、「もっといろんな方向から評価していかないと」ということで、三つの方向性を掲げるようになりました。1970年代のスウェーデンの移民政策を参考にしています。企業が多文化共生にとりくむための、検討や評価の指針として使っていただけたらと思います。
まず基本的人権。当然のことですが、不公平があれば是正する。国籍や現在の在留資格によって機会が不平等というのは、あってはなりません。機会平等のために、例えばどう多言語の環境を整えていくのか。通訳や翻訳のしくみ、日本語を習得する機会をどうつくるのか。これは極めて重要です。それから法律について、平等な運用をすることです。
二つ目は力づけ(エンパワメント)。機会が平等になったら即、多文化共生ではありません。
例えば学校。日本の公教育は、日本文化の教育、日本人向けの教育です。文化や民族の点で少数者であっても、大事にされる環境がなければ。例えばブラジルから来た子に、ブラジルの文化やポルトガル語を学ぶ機会をどう保障していくのかが、大きな課題になります。スウェーデンの公教育では、自分の文化を自分で選択して学ぶことが保障されています。それが「力づけ」という発想です。
三番目は、地域社会の変化を挙げました。地域社会が、多文化とか多民族をどう理解していくのか。これは私たち自身の反省でもあるんですが、何か問題があったときに通訳が駆けつける活動をしていくだけでは、同じ問題がどんどん起き続けます。
例えば以前、「工場で指が飛んだ」という相談が来て、一緒に労基署で手続きをしましたが、その人の知り合いで、同じように指をとばした人がいるとわかりました。芋づる式にそういう人が出てくる。こりゃいかん、「指がとばない社会」をつくらなければと思いました。いつまでも通訳がとんでいくようじゃいけない。地域社会の中で、そういうことが起きないようにする。「外国人だから指導しなくてもいい」じゃなくて、きちっと研修してもらわないと困るわけです。
ボランティアを通して地域社会の変化を私たち(多文化共生センター)はたくさんのボランティアに参加してもらい、問題を知ってもらおう、関心をもった市民の参加を通して地域社会の変化を促そうと思っています。電話相談(多言語ホットライン)のほかにも、「医療保健プロジェクト」といって、キャラバンを組んで外国人の多く住むところに出かけていって、医療相談会や成人病検診をする。外国人向けのパソコン研修をする。学校への通訳派遣、日本語学習支援のボランティアなどもしています。
今までは社会の課題は行政がとりくむべきと言われてきました。阪神大震災以降、NPO法ができ、多様なニーズがある社会では、多様な担い手がいないと機能しないという意見が出てきました。専門家であるNPOと企業や自治体が連携して解決していく、というスタイルが日本でも普及してきました。NGOやNPOの役割は今後、大きくなっていくでしょう。
今、いろんな文化をもった人々が暮らしています。これに対応するには、間違いなくいろんな人の力が必要になる。新しい課題ですが、これから欠かせない取り組みになると思います。われわれが力になれそうだったら、お声をかけてください。今までは、外国人が来ると言うと、「マイナス」のイメージで語られてきました。それをどう「プラス」にしていけるか、それは日本列島の浮沈にかかわる問題じゃないかと思っています。
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