多民族共生人権教育センター
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多民族共生社会をめざして 私たちの就職・私たちの職場

2001年10月26日
多民族共生就職セミナー・パート2/プログラム2部

プロフィール紹介
■李 美葉(イ・ミヨ

・特定非営利法人・多民族共生人権教育センター理事
・京都市在住の在日コリアン2世
・「在日外国人保護者会」代表
・「京都市外国籍市民施策懇話会」委員でもある

○パネリスト
■オルティス高良里津子(オルティス・たから・りつこ)

・日系ボリビア人2世。1992年ご主人とともに来日
・小学1年生、2年生の子どもの母親
・2001年3月「高槻市在日外国人市民ネットワーク」共同代表
・在日外国人母親サークル「ワールドママ」を立ち上げる

■阮 文節(ゲン・ブンセツ)
・1997年、留学生として中国より来日
・現在大阪大学法学部4回生で就職活動中

■金 哲年(キム・チョルニョン)
・高槻市在住の在日コリアン3世
・1987年郵便外務職員に採用され、茨木郵便局に勤務する
・「郵便局同胞の会」代表

■田中 昭紘(たなか あきつぐ)
・1964年カネボウ株式会社に入社
・1992年より3年間、大阪同和問題企業連絡会の代表幹事を務める
・その後部落解放・人権大学講座講師、部落解放・人権研究所企業部会副部会長に就任
・また1996年より5年間專ッ和地区人材雇用開発センター専務理事を務める
・2001年4月より大阪同和問題企業連絡会の理事長に就任

■金子 則夫(かねこ のりお)
・元安田生命保険相互会社、人権担当
・社外でも「大阪企業同和問題推進連絡協議会」「大阪同和問題企業連絡会」の代表幹事を務める
・現在「部落解放・人権大学講座自己啓発学習」の助言者であり、「特定非営利活動法人・多民族共生人権教育センター企業学習会」相談役


パネルディスカッションの様子司会:まず三人の当事者の方から、それぞれのお立場で思いを述べていただき、そのあと企業は何を努力しているのかをうかがいます。

阮文節:就職活動は、前もって十分準備をしなかったのが失敗でした。勉強ができたら会社に入れると思っていましたが、それは甘い考えでした。面接で、「結婚して仕事を続ける考えをもっていますか」と聞かれたことがあります。同じ法学部の男子は簡単に内定をもらうのに、女性はなかなかもらえませんでした。会社の見学に行って、仕事の量がすごいのを知りました。男女ともこれほど忙しく働けば、子どもの教育が難しくなるかと思ったのですが、やはり私は仕事がしたい。どうやって両立できるでしょう。あくまでもがんばりたいです。

オルティス高良里津子さんオルティス高良里津子:私は日系ボリビア人二世で、ネイティブのボリビア人と結婚して日本に来て、もう10年になります。来日して最初に日本の企業の人と面接した時、「あなたたち偽装結婚じゃないの?」って目の前で言われ、すごく悔しかったです。きちんとして結婚してきたのに、なんでそこまで言われないといけないのかと思いました。
 主人は一生懸命日本語を覚えてきたんですけど、すぐ外国人とわかるから、仕事を探すのが大変です。それに日本人と同じように仕事ができても、給料が全く違うんです。ボーナスもない。社会保険、雇用保険にも入れてもらえない。弱い立場にいるから、条件を呑まないと、仕事がないんですよ。それと、外国人はきつい仕事が多いです。土日も仕事に出てくれと言われたら、出ないといけない。会社に従わないと、すぐクビになってしまう。派遣会社から仕事をもらっていても、「もう明日で終わってください」と言われ、次の仕事まで、間があく時があります。その間、どうして食べていこうか。
 外国人も税金を払うし、食費もかかるし、アパートの家賃も払う。日本人と全く同じ条件なんです。だから1ヶ月2ヶ月仕事がないと、子どもも二人いるから、ものすごくつらいんです。仕事がない時の保障がありません。それから、よく「なに人はダメ」って言われます。その会社で前に外国人がいて、その人に悪いイメージがあると、「もう、とらない」と言われる。でもまじめに仕事している人もいる。それを、ちゃんと見てもらいたいです。

金哲年さん金哲年:私は在日3世で35歳です。韓国語は挨拶程度しかわかりません。郵便局に1987年に入って、もう14年の歳月が流れました。その前は、高槻市で在日韓国・朝鮮人教育の子ども会の指導員をしていました。これは魅力的な仕事でしたが、ある時、(李敬宰)理事長に「郵便局を受験しないか」と声をかけられました。受験しようと思った理由で、一つ大きなことは、子ども会の指導員をして、将来に展望がもてない子どもたちが圧倒的に多いのを知ったからでした。なぜかというと、自分の親たちが、いわゆる不安定な仕事にしかついていない。それで子ども達が将来を考えられるのかということですね。子どもやから夢をもって当たり前やのに、もう小学校ぐらいから、夢を閉ざされている現状がありました。郵便局という公務員の仕事は、安定してて誰が見てもわかる。「あ、韓国・朝鮮人でも働けるんやな」と思ってもらいたい。そう思ってチャレンジして、合格することができました。
 就職した当初は、プレッシャーや、日本人だけの職場でやってく不安もありました。ぶっちゃけたことを言うと、韓国・朝鮮人のことを日本人は知らなさすぎます。たとえば選挙の前に「金くん、行ってや」などとと言われる。ただ、変わってきたのは、身近にキムでありパクであり、という人間がいると、やっぱり意識しだすんですね。「昨日、テレビで戦後補償問題やってたな」とか、「鶴橋では焼肉うまいな」とか話しかけられる。たわいもないことでも、キャッチボールをしながら、だんだん人間関係ができてくる。その中で少しずつ理解ができてくる。これは非常に大きなことです。

司会:お話の中にいろんな提起がありました。大阪府教育委員会が1995年から5年にわたって行った進路追跡調査(府立高校を卒業した外国籍生徒を対象)によると、就職の段階で本名から日本名に変えた人が結構います。
 具体的に就職差別と思われる行為としては、「本名で資料請求すると、会社案内が送られてこない」とか、「本籍がわかった時点で、入社試験を受けることを拒まれた」など、様々な声が寄せられています。このことは、日本社会に差別が残っていることを如実に表していると思います。この現状に対し、企業側として、どういう取り組みをしてきたかということを、金子さん、田中さんにお話し願います。

金子則夫さん金子:私が所属していた安田生命では、差別事件を契機に人権問題に取り組みはじめました。1981年の部落差別事件の後、全社的に研修しました。しかし次に在日コリアンへの差別事件が発生します。知識だけではいけないとわかり、現地体験に行くようになりました。しかし、その3年後にまた差別事件が発生します。ここで悩んだんですが、その時、安田生命として「在日」を一人も採用していないことがわかり、これが問題だ、門戸を開こうということで、積極的に在日の方を採用していくわけです。知識は土台として大切ですが、当事者を採用して、共生できる職場を作っていくことこそ、真の啓発につながるんじゃないかと思います。
 課題を三つ述べます。一つは、外国人問題の学習を真剣にやっていくこと。二つ目は、目標を持った採用を。私は「国籍は問わない」ではなくて、こだわりたいと思っています。本当に外国人問題を理解していこうと思うなら、採用しなければ。その中で本当の学習ができると思います。三つ目は本名で採用する。通名で入社しますと、最初はそれなりに啓発になっても、時間とともに日本人の中で埋もれてしまう。それでは差別が温存されていくと思います。

田中昭紘さん田中:差別事件と直接向かいあった時に、表現できないつらさがついてまわります。人権の原点は当事者志向です。それを忘れてはならない。3人の方からお話をうかがって、まさに当事者の声であったと思います。当事者の思いをどこまで企業として取り入れることができるのか、考えていかないといけない。日本はこのままいくと、人口の減少が始まっていきます。必ず、企業は転換していくでしょう。外国人労働者の勉強をしないと、立ちおくれてしまいます。「公正選考」だけでは企業の社会的責任を果たしたことになりません。

司会:力強いお話をいただきました。企業サイドの問題には、民族差別も女性差別もあります。同和問題には取り組んでも他の問題には取り組まない企業や学校がありますが、人権感覚の根底は同じはずです。最後、一言ずつ、企業の方に言いたいことをお願いします。

阮文節さん:女子留学生にもっとチャンスを下さい。会社に貢献できるように努力したいと思います。

高良:「どこの国の人」というのでなく、一人の人間として、仕事できるかどうかをちゃんとみてもらいたい。採用する時、「外国人だから」「ボリビア人だから」じゃなくて、ちゃんと一人の人間として見てもらえたら、という思いはあります。

:郵便局は誰が見てもわかる職場ですけど、外国籍で受験できることを知らない人がまだまだ多い。今日は「就職差別はしません」という企業の方がたくさん来られていて、一筋の光が見えてきます。僕らが高校生の頃なら、考えられへんかったと思います。

金子:北海道のある温泉旅館で「外国人お断り」の看板がたった。旅館の言い分は、外国人はマナーを守らない。わからなくもないんですが、一律にお断りは、やはりおかしい。その前に何か策がとれなかったかと思うんですね。私は、新しく渡日された方に銭湯のマナーは教える義務があると思います。同時に、外国人も積極的に勉強してほしい。教え教えられ、コミュニケーションをとる中で、本当の意味の共生が芽生えてくるんじゃないかと思いました。

田中:「助け合わねば、生きていけない、お互いが。時に、害しあわねば生きていけない。ここに人間の悲しさがある」。これが今の世の中ではないかなと思います。これを突き詰めていけば明るさが芽生えてくるし、人権文化確立が必ずや、と信じております。

司会:今日、40名を超える学生さんに来られました。国籍をみると、8割がニューカマーです。外国籍の学生さんがこのようなセミナーを望んでいたことがわかります。皆様方は、これからは多民族へと視野を広げていただきたい。
 私たち外国人はよく、「普通に生きたい」と言います。一方で金子さんは「国籍にこだわる」と言われました。これは矛盾していません。私たちは一人一人の差異を認めあって、同じように、職場で地域で、社会を構成する一員として生きていきたいのです。
 どうぞ同じ土俵に、私たちを立たせて頂きたいと思います。

 

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