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田中 宏 さん
プロフィール

1937年岡山県生まれ。一橋大学大学院経済学研究科修了。経済学修士(一橋大学)。現在、龍谷大学教授。専門は日本アジア関係史、ポスト植民地問題。著書に「在日外国人新版」(岩波書店)、「遺族と戦後」(共著・岩波書店)など。
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(龍谷大学教授)
「多民族共生とは」
2002年2月26日
企業学習会 第1回企業研修会 講演
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在日外国人の人権問題−今と昔、内と外の視点から−
いまVTR(編集注:「日系ブラジル少年が殺された −日本に共生社会は来るか」。日系ブラジル人エルクラノ君の殺害事件に、辛淑玉さんがコメントした番組)をご覧いただいた狙いは、ニューカマーと呼ばれる新しい外国人の問題と、在日コリアンの問題をクロスして考えるというものです。「今と昔、内と外の視点から」というサブタイトルつけましたが、たとえば在日の辛(淑玉)さんの体験とエルクラノ事件をクロスさせると何が見えてくるか、と考えていければすごくいいだろうと思います。
消えた「外国人平等」条項
戦後の在日外国人がどう過ごしてきたかを押さえておこうと思います。
戦後、日本は約7年間、実質アメリカの占領下におかれます。マッカーサーのもとでさまざまな占領改革が次々行なわれるわけです。その一つが職業政策に関する指令で、「労働者を国籍によって差別してはいけない」と。それを受けて昭和21年、厚生年金保険法が改正されます。簡単に言えば、GHQに叱られたので、厚生年金保険の国籍条項を外したということです。厚生年金保険というのは、民間企業で働いている人が加入する年金ですよね。にもかかわらず、国籍条項が入っていた。民間・政府問わず、ことごとく外国人を排除するという制度を持っていたんですね。
明治憲法を改正する際、実は外国人のことが問題になりました。マッカーサーは部下に命じて、憲法改正草案の要綱をつくり、日本政府に突き付けます。その憲法草案の中には第13条として、「すべての自然人は法の前に平等である」という平等条項のほかに、16条として「外国人は法の平等な保護を受ける」という条項が入っていました。日本の人が非常に排外的であることに占領当局は神経を使って、憲法レベルでもきちんとさせようと考えたようですね。
ところが政府高官が、16条を削除し、13条に外国人の人権も含めることとして、次のような新13条規定で合意を取り付けた。新13条は「すべての自然人は、その日本国民たると否とを問わず、法律の下に平等にして、人種、信条、性別、社会上の身分、若しくは、門閥または国籍により、政治上、経済上、又は社会上の関係において差別せらるることなし」。こうすればGHQとしても、16条の外国人平等条項は削除しても同じことが盛込まれるからいいだろう、と思ったわけですよね。
ところが、幣原内閣が1946年3月に発表した憲法改正草案要綱では、先ほど紹介した新13条の「日本国民と否とを問わず」と、次の行の「国籍」が姿を消しているのがポイントです。そして主語は「およそ人は」となっています。
「国民」とは誰か
おそらく日本側は、主語の「およそ人は」という意味には、日本人も外国人も含んだ強い意味がある、とGHQに説明したんだろうと思います。そこでGHQは、「それではよかろう」と、ゴーサインを出したと推測するわけです。今われわれが持っている憲法は、14条、「すべて国民は」となってます。憲法は、「国民」という言葉を多用いたします。ここから問題になってくるのは、「国民」とは誰か。別の言い方をすると、外国人はそこに入るか入らないかということですね。
当時、英文の官報も出されていました。そこに日本国憲法の全文英訳が載っています。問題の14条平等条項の主語は“all of the
people”となっています。ところが10条の「日本国民たる要件は法律でこれを定める」というところは、“Japanese national”という英語が使われています。これが名実ともに、「日本国籍を持つ者」という意味です。日本語の「国民」は、10条を除いて、すべて英文では“people”です。“people”という言葉と、「国民」という言葉の微妙なずれに、一つの落とし穴があったんではないか。
20年以上前、豊田市が成人式の時に「在日」の人のところに案内状を出さないということが発覚して、市民運動で出かけて行って文句を言ったことがあるんですね。出てきた課長は、「成人式を行なう根拠になる法律は国民の祝祭日に関する法律。したがって、国民である人だけに案内状出して、何が悪い」と言いました。だいたい役所では、「国民」というと外国人は入らないことになっているらしいですね。黙っていると自動的に入らない。国民年金は外国人は入れない年金としてつくられました。国民健康保健もそうです。ついでにいうと国民体育大会も、外国人は出させないということでやってきた。「国民」というのは恐いんですよ。
そうかと思うと、憲法30条には、「国民は法律の定めるところにより、納税の義務を負う」とあるんです。では、税金を納める義務は国民しかないのかというと、違うんですね。憲法が税金を取るわけじゃない。所得税法では、第5条納税義務者は「居住者はこの法律により、所得税を納める義務がある」となっているんですよ。所得税法は「居住者は」となっているんです。憲法は「国民は」ですけど。
1952年に日本が独立を回復した時に、旧植民地出身者をすべて外国人にしてしまいました。今から50年前に、突然「ハイ、今日からお前は外国人」と宣告されたんですね。「ハイ、公営住宅は入れません」「児童手当は出しません」。何でもマイナスされる。逆にプラスもあるんです。「今日から外国人なので、指紋を登録しなさい」。外国人にしてしまうと、何でも出来るんです。戦争で死んだって「おまえら外国人だから遺族年金は出しません」と。平等に扱うところは、税金取るところだけという、そういうところに投げ込まれたのは、ちょうど50年前なんですね.。
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