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草加 道常 さん
(RINK事務局員)
※RINK:すべての外国人労働者とその家族の人権を守る関西ネットワーク
『移住労働者の現状と課題』
2002年10月28日
多民族共生人権教育センター「企業学習会」第2回講演会
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なぜ「すべての外国人労働者」か
RINK(すべての外国人労働者とその家族の人権を守る関西ネットワーク)が結成されたのは10年位前、国連で移住労働者の権利条約が採択された後です。
なぜ「外国人」でなく「外国人労働者」なのかというと、日本に住んでいる外国人の大半は実際に仕事をしておられる。たとえばオーバーステイの人でも仕事をせずに生活をするのは困難です。そういうことを抜きにして問題を提起することはできないので、「すべての外国人労働者とその家族」という名称にしています。
大阪は全国一、在日コリアンが多く、在日の問題抜きにニューカマーの問題だけに関わることはできませんから、RINKの活動範囲はニューカマーとオールドカマー両方にかかっています。もちろん在日のことを専門的に取り組まれているところもありますので、一部重なるわけですが。私たちの活動対象は「すべての外国人」ですので、いろいろなケースの相談を受けます。法的にも非常に厳しい状況に置かれている方からの相談が多いです。「こんなケースもあるのか」と教えられることが出てくる毎日です。
地域で起こっていること
今日来られている皆さんの会社にも外国人の方が働いておられるかと思いますが、あまり問題を感じられずに過ごされている方が多いと思います。しかし実際、職場だけでなく、配偶者、子どもが生活している場所、地域ではいろいろな問題が起こっています。
大阪の事例をひとつ挙げますと、こういうことがありました。中国残留日本人で帰国された方が、大阪では府営住宅に結構多く住んでおられます。府営住宅に日本人の入居希望者が少ないため、中国人の比率が高くなる。ゴミの捨て方一つとっても中国と日本では全然習慣が違うので、文化摩擦が起こったりする。その中で自治会から「団地が中国人と高齢者のスラムになってしまうのではないか」というビラが撒かれたりする。お互いのコミュニケーションをはかれないことがこういう対立を生みます。そういうことの解決のためにも私たちは取り組んでいます。
強制送還される子ども
中国残留日本人の家族、特に子どもや孫が養子であった、配偶者の継子であったということが判明し、日本に残ることが認められないケースが多発しました。養子を偽るケースも多くあります。2000年に私たちが調査しただけでも1年間に100人弱の子供が強制送還されています。おそらく実際にはその倍以上が返されていると推測されます。200人という人数は、一つの小学校の児童の人数です。一つの小学校が大阪府内で1年間でなくなるのに学校から声があがらないのが不思議です。関東でも同じ問題が起こっていました。「日本で生まれて育って10年を越えても、それでも強制送還する」というのが今の法律なのです。本来このようなことが許されるのか。例えばドイツなら、15年住んでいると国籍が取得できます。何か理不尽だと感じる方も多いかと思います。
欧米における「逆風」、日本でも
いろんな問題の背景に、外国人の地位が非常に不安定ということがあります。不安定な状態におかれ、さまざまな社会的権利をもてない中で、さらに逆風が起きます。
その一つは昨年9.11(いわゆる「同時多発テロ」)以降です。アメリカは、反テロ愛国法などが成立し、外国人は逮捕状なしで身柄を拘束できるようになりました。裁判所の許可なく盗聴もできる。電子メールもすべてです。アメリカだけではありません。オーストリアではある程度ドイツ語ができなければビザを出さない。イタリアではEU域以外から来る外国人から指紋を採取する。人権先進国であるはずの欧米でこうですから、日本の外国人労働者にも非常に大きな逆風です。外国人は「人権の対象」ではなく「治安管理の対象」なのです。
第二にグローバリゼーションの影響です。各国の経済政策の結果としてさまざまな矛盾が表れているのに、「犯罪も失業も移住労働者のせいだ」と言われる。これははっきり言って人種差別の扇動だと思います。日本でも東京都知事が言っています。これには国連の人種差別撤廃委員会でも懸念を表明しました。
つくられた「外国人は危険」というイメージ
マスコミの問題ですが、「中国人を見たらピッキング犯と思え」といったことが新聞や週刊誌に書かれています。吊り広告も出ています。これは本当に扇動をやっているとしか思えません。数字のマジックでもって犯罪が多いとされ、「外国人は危ない」というマスコミからの宣伝がなされる中、「安全なまちづくり」をするために本当は何が必要かという基本的な視点、人権の視点が抜けてしまうのです。
バロメーターとしての「外国人の人権」
内海愛子さんが書かれているのですが、外国人に対してさまざまなかたちで敵愾心をあおるような時期というのは、世の中としてきな臭い時期に来ている。きな臭い時代というのは、一人一人の「こう生きたい」という思いを押しつぶすような社会でしかないわけです。そういう社会にならないように、一つのバロメーターとして「外国人に対してどれだけきちんと人権を守る国・社会であるのか、地域であるのか」ということがあります。それによって、日本が本当はどういう社会であるかが見えてくると思います。
戦後の外国人への政策は、帰国させることを前提にしています。今の入管法は、1947年の外国人登録令に由来していて、当時は外国人の93%が朝鮮人でした。どうして今の入管法には外国人の基本的人権に対する配慮がないのかというと、実はスタートの時から「いかに帰すか」だったわけなんです。「日本の中で一緒にこういうふうに暮らしましょう」という法律ではないのです。
難民の収容は人権侵害
難民問題で、入管法の本質がよりはっきりしました。日本に難民として逃れて、日本で難民申請をしたアフガニスタン人の多くが入国管理局の施設に収容されています。これは世界で見ても非常に特異です。普通、難民を収容するなんてことは、ヨーロッパではまず考えられません。難民に対する原則を、法務省を含めてきちんとしたものをもっていない。毎年1桁の難民しか認定していないのは、外国からは不思議がられます。どこかで変えなければなりません。
入管法自体が人権侵害の温床になっています。一年に5、6人が収容施設の中で自殺未遂を起こし、毎年1人か2人は亡くなっています。先日もアフガニスタン難民の方が大きな爪切りを飲みました。なぜか。その人はアフガンから逃れて、日本はきっと庇護してくれるだろうと思って難民申請をした。ところが難民としては認められず閉じ込められた。その上、日本は自分をカブールに返そうとしている。カブールでは自分たちを虐殺した北部同盟が政権を担っている。「そこへ送り返すと言うことは自分を殺すことだ、日本とはそういう国なのか」と彼は思ったわけです。絶望して爪切りを飲んだ。そこまで追い詰められてしまうのです。
ニューカマー労働者の現場
教育や医療のことをいかにきちんとやっていくのかが、本当に「多文化のまち、外国籍住民とともに生きるまち」のもとになるんですが、在留資格なしの人は国民健康保険なし、児童手当も公営住宅もありません。労働関係法は在留資格の有無に関係なく適応されるのですが、現場としては低賃金で雇える人がほしい。だからオーバーステイの人が働いている職場は相当きつい職場ですし、時給も600円そこそこです。オーナーの方が足元を見たりします。多くの場合、保険もありません。中学生でアルバイトしている方もいます。それで家族の収入を何とか補っているんですけれども、全体の収入として非常に低い状態です。
ブラジル、ペルーの人でも長期の滞在に入るケースも多くなっています。在留の期間が10年に近づく方も非常に多いです。こういうかたちで来られるのは高学歴の方が多いですが、日本で働くのは工場の現場です。雇用契約も正式に結んでいない方がほとんどです。口約束で、本人も契約内容を分かっていない場合が多いです。そういう現場が大半です。派遣業者の問題は法的には際どい面もあります。収入も欧米系との間で格差が見られます。
病気になると
在留資格がない場合は健康保険の適応もないから、病気になったらどうしようもない。ほとんど売薬で済ませるか我慢します。どうしても医者に行くときは救急車がいる状態です。今までは緊急で生活保護の適用をしてきましたが、厚生労働省の指導でできなくなった。手術をしてしまうとどこからも回収できなくなる。これが合法的なビザを持たない25万人もの人の状況です。重病の人に対して治療しない病院はおかしいとしかいえませんが、治療費の未払いのこともあるので、やはり行政が関与していかないと解決できません。
日本の中の力で変えていく
オーバーステイ等の人たちも同じように働いています。日本の社会が必要としている働き手だからこそ日本で生活できているのです。日本の社会が必要としないなら日本にいません。それだけ必要な下支えをしている外国籍の労働者に対して、権利を認めていくことから変えていく必要があるのではないか、ということが一番問われていることだと思います。非正規滞在の人にも申告すれば一定の条件を付けて正規のビザを出していかないとだめな時期にきています。在日コリアンが5世代100年日本に住んでも、持っているビザは「永住資格」です。「永住権」ではなく、与えられたものだからいつでも取り消せる。これでも日本の外国人のもっとも安定した在留資格なわけです。もう一度、日本の外国籍住民の権利の問題を根本的なところから考え直す。できれば外圧からでなく日本の中の力で変えていければよいと思います。
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