多民族共生人権教育センター
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講演 大谷昭宏さん「これからの在日外国人施策について考える〜大阪府における在日外国人施策に関する指針から〜」

大谷 昭宏さん

大谷昭宏さんプロフィール

1945年東京生まれ。早稲田大学政経学部卒業後、読売新聞大阪本社に入社。大阪府警捜査一課担当、朝刊社会面コラム『窓』欄担当などを経て、1987年同社を退社。その後、故・黒田清氏と共に黒田ジャーナル設立、黒田氏没後は個人事務所を設けてジャーナリズム活動を展開。現在、テレビ朝日系列「サンデープロジェクト」、関西テレビ「痛快エブリデイ」などに出演中。

(ジャーナリスト)

『これからの在日外国人施策について考える
〜大阪府における在日外国人施策に関する指針から〜』

2002年11月26日
2002年度第3回 多民族共生人権啓発セミナー

 今、北朝鮮による拉致被害者の問題、日朝国交正常化に人々の関心が集中しています。在日韓国・朝鮮人に対する差別というものが、拉致問題をきっかけとしていっそう出てきている。これは我々メディアの責任が大きいんですが、それだけでなく私たちの社会の民主主義の基盤が弱いということがあると思います。

50年後、100年後を見据えて −日朝国交正常化−

大谷昭宏さん 拉致問題は衝撃的でした。「国交正常化なんかする必要はない、経済支援もすべきでない」という声が非常に強くなってきますと、私のような、「国交正常化を進めるべきだ」というジャーナリストは、攻撃の対象になります。いろんな批判があるにもかかわらず、私は、日朝国交正常化を急ぎ、食糧支援もやるべきだと申し上げている。自民党の野中さん(私は彼の他の主張にはあまり賛同しないが)は、次のようなことを言っています。
 国民が飢えているような現在の北朝鮮の体制が、そう長持ちするはずはない。(今、日本が食糧支援をするならば、)現体制が崩れて50年100年たった時に国民は、「私たちの親の代、祖父母の代は、日本に対して拉致というひどいことをした。それが明らかになった時に、それでも日本は私たちに米を送ってくれた、国交正常化を呼びかけてくれた」と思うのではないか。国と国の関係は10年や20年で出来上がっていくものではない。50年後100年後の北朝鮮のことを考えて、今こそあの国に米を送ろう、正常化しよう。
――と、野中さんは言っている。50年後、100年後に北朝鮮の人々が「あの拉致事件やテポドンのことは祖父母の世代にやったことだが、あれはやってはいけないことだった」ということを思うかもしれない。だとしたら、今の私たちの姿と生き写しではないか。
 今、よほど間違った歴史観をもっているか、わざと事実を見ない人を除けば、あの強制連行を「正しかった」と思っている日本人は少ないでしょう。今、私たちは、60年前のことを明らかに「間違っていた」と思っています。今、北朝鮮にいる方が、50年後におそらく同じことを感じてくれるはずだ。そういう姿勢でやっていくのが、正常化に向けて非常に大事なことではないかと思います。

弱者を追い詰めるいびつな社会

 今、新聞を見ていて、殺人事件の記事が出ていない日はありません。日本はかつて、神話のように、安全で治安のいい国だと言われていたのですが。今年の最大の特徴は、女性の被害者が圧倒的に多いということです。さらに女性が加害者になることも増えています。もう一つ、65歳以上の高齢者が、犯罪の加害者になっているのも特徴的です。少年の犯罪もきわめて多い。明らかに社会がおかしくなっているといえます。弱い立場の女性が殺人を犯した背景を見ますと、非常に追い詰められている閉塞の状況があったようです。社会の矛盾が非常にいびつな形で現われていることが、ジャーナリズムの仕事でもはっきりと見えてきています。

内向きな力と在日外国人攻撃

 先日、日本に来たイギリスのジャーナリストがこう言っていました。「先進国といわれる中で、日本はきわめて異常な国だ。これだけデフレで、長年働いてきた人が次から次へとリストラされて、高校生の就職は3分の1しか決まらない。ここまで状況が悪くなると、多くの国では、まず為政者たちを交代させようとする。しかし日本ではそうでない。独裁国家などではクーデターや暴動が起きる。しかし日本ではそれもない。年を追うごとに追い詰められているのに、なぜもちこたえているのか。それは国の中を見てみるとわかる。本来は外へ、政治に向かうべき力が、全部、内向きになっていて、弱者をやっつけているんじゃないか。それでバランスを保っているのが日本だ」というわけです。
 そのいびつな力が女性達やお年寄りに対して向けられています。いちばん向かっているのは子どもたちでしょう。弱いところ弱いところへ向かっているのです。
 我々メディアにも大きく責任が問われるところですが、拉致の問題を契機として、在日外国人に対する非常な嫌がらせが始まっています。弱いところを踏みつけてバランスを保っている国が、拉致問題のようなことが起こったら一気に崩れる。在日韓国・朝鮮人の人たちに攻撃が向かう。大変残念なことに、これを煽りたてる方たちもいるわけです。

石原都知事の外国人差別・女性差別

セミナー受講者「三国人」発言をした石原慎太郎都知事は、大震災のような災害が起きたら外国人は「何をするかわからない」、だから、何か起きたら、「三国人は身柄を拘束しておけ」というようなことをずっと言っている人です。反北朝鮮キャンペーンをやって、それで自分の支持率をあげるという、実にきたない手法をとる政治家です。
 東京都民の中で石原さんに対する支持率が、男性より女性のほうがはるかに高いということが、私には不思議でしかたがない。女性を侮辱する発言をしているからです。「他人の言葉を借りただけ」という言い訳をしておるんですが、「生殖年齢を過ぎた女性たちは、基本的に社会にいる必要がないんじゃないか」と堂々と発言している。それでも東京都民のなかで女性のほうが支持率が高いのです。私たちは日ごろから「男女共同参画社会」とか、「機会均等」とか学校で教えています。でも知事が平気でそういう発言をする社会で、大人が誰一人ひきずりおろそうとしない。とすれば、子どもたちは、「学校であのように教えているけど、知事がああ言っても誰も怒らないんだ」と思う。私たちが子どもたちに教えていることは大事なことじゃない、ということになってしまいます。

盗聴法はどんな社会をつくるのか

 1999年に盗聴法ができて、ずいぶん私たちもそれに対する反対をしたんですが、その後、あれから3年たって、盗聴法による検挙者も出ています。
 ある意味で、国は法律をつくるだけで、十分目的を達しているんじゃないかと思います。というのも、盗聴法っていうのは、「隣にスパイがいるかもしれない」「我々の周りに工作員がいる」、そういう社会をつくります。「だからあいつらは危ないんだ」ということが言われる。それが本当に平和で民主的な国家なのか。それは私たちにとって住みやすい国であるのか。私たちはなぜそういう国を子どもたちに残す必要があるのか。なぜ私たちはお互い疑りあうような、盗み聞きするような国をつくろうとしているのか。
 この国に住む、あらゆる国から来ている外国人たちは、「常にこの国の人たちは我々を監視している、盗み聞きをしている、見張っているんだ」ということになる。

何のため? 外国人を脅かす住基ネット

 住民基本台帳法ができあがり、3年間の周知徹底期間をへて2002年8月5日には、私たち国民一人ひとりに番号がふられました。住基ネットには巨額の費用、毎年毎年200億から400億のお金がつぎこまれています。これは何のためでしょうか。「鹿児島から北海道に引っ越した人が、鹿児島で転出届を出していれば、北海道で住民票がとれる」などと説明されていますが、いったいどれほどの人がそれで「ああ便利だ」と思うでしょうか。全くのおためごかしです。
 なお、国民に番号がふられたと言いましたが、在日外国人はどうかというと、とっくの昔から、外国人登録証には、一人ひとり、はっきりと番号がふられていました。
 この住基ネットのきわめて曲者のところは、番号の履歴がすべて明らかになる、ということです。途中で番号が変わるとわかってしまうのです。8月5日に全国で一斉に番号をふった。在日の人が5年後に帰化したら、「ああ、この人は住基ネットができて5年後に、やっと帰化申請が通ったんだな」とわかる。いくら番号を変えたって履歴は残るわけですから。そしてまた、外国人登録証をもっていない外国人、つまり「どの番号ももっていない人」をあぶりだそう、という意図があります。番号なしの人は「不法」に入ってきた人だということになる。
 石原都知事の発言でもありましたが、彼が「ネット履歴をすぐにくれ」と命じると、すぐリストが出てきます。「平成14年8月5日以降に番号を取得した人間は、リストアップしておこう」ということもできるのです。

子どもや女性も守らない住基ネット

大谷昭宏さん 児童虐待がわかって、子どもが保護されたとします。どこかの施設にいるとしましょう。行政は「この子どもを守ってあげます」と言っている一方で、暴力をふるい、追いかけまわしている父親のところに、子どもの番号をわざわざ教えることができるのです。「あんたの子どもの番号はこれです。今の所在地すぐわかりますよ」と。なぜそんなことをするのか。
 夫の暴力を受けて逃げた女性、DVの被害者にしてもそうです。法律もつくって、「保護しますよ」と言っていながら、男性が女性の居場所をわかってしまう。法律ができて、裁判所の命令で男性に「その女性に近づくな」と中止命令を出せるようになったにもかかわらず、こんなことができるのです。行政にどれだけ人権感覚がないかを表していると思います。

人権擁護法の制定とカラクリ

 人権擁護法はなぜできたのか。国連の規約人権委員会は「日本ほど、在日朝鮮人、あるいは在日の外国人にめちゃくちゃな差別をしている国はない。部落差別もある。そのなかでも最大の人権侵害機関として挙げられるものが、刑務所と少年院と入国管理局と、警察署の代用監獄である」と批判してきました。アムネスティ・インターナショナルからも批判され、困って、なんとかカッコだけつけて、世界を納得させるために人権擁護法をつくることになりました。
 人権擁護法はつくるが、自分たちがやっている悪事はばれないようにしようと思って、「独立した監視機関をつくります」と国連には言ったけれど、その機関は実際、法務省の職員で占められていました。そうしたら、ばれないからです。
 先日明らかになった名古屋刑務所のように、刑務所での暴力は非常にひどい。しかし、いくら言っても法務省は取り上げない。当たり前です。刑務所は法務省の管轄なのです。人権擁護局も法務省の中にある。いくら受刑者が文句を言っても改善されないしくみなのです。警察の代用監獄にしても、警視庁じゃなくて法務省の管轄なのです。
 法務省の職員の人権感覚はめちゃくちゃです。外国人、とりわけアジアの女性が被害にあっています。役人たちが「人権、人権」と言っていることは、実は決して、相手のことなんか考えていない。自分たちがいかにいい思いをするか。それを取材したジャーナリストのような連中が、国連みたいなところに行って「こんなひどいことをしている、日本の人権問題はこんなにひどいんだ」としゃべる。これをなんとかしなきゃいけない。自分たちが悪さしていることをなんとかするんじゃなくて、ジャーナリストをなんとかしようとする。それで人権擁護法のなかでマスコミ対策条項をつくったわけです。

アジアの女性に対する暴力

大谷昭宏さん 国連の規約人権委員会が最も怒っていたのが、入国管理局におけるアジアの女性に対する強姦・輪姦事件です。それこそ「入管の職員で、女性をオモチャにした経験がない職員はいないだろう」といわれるぐらい、みんなアジアの女性をオモチャにしていて当たり前で、習慣になっているという。女性の弱みを握って、金をせびる職員もいました。国連の規約人権委員会が、性暴力が多いことに対して、「日本は、女性の性に対する発想が、戦前と全く変わっていない」と批判しています。

お上に頼らず、力を合わせて

 残念ながら私たちの社会は、閉塞した状況の中で、弱いところへ暴力が向かっています。いまだにごまかしと繕いだらけの社会です。そんななかでただ一つ言えることは、「もう、お上にまかすまい!」ということです。心のかよった行政や司法を求めるほうが間違い。多民族共生人権教育センターのような、NPOなどの非営利・民間団体で、力を合わせて、きちんとしたものをつくりなおしていかない限り、私たちは決して子どもたちに胸をはって残せる社会をつくりだしていけない。ただ子どもたちに誇れる社会をつくりたい。その原点から考えなおしていかなければと思います。

 

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