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重田 治さん
(大阪労働局職業安定部職業対策課 課長)
「就職活動に向けて」
2003年1月14日
多民族共生人権教育センター第3回就職セミナー講演
大阪労働局職業安定部職業対策課の重田と申します。私自身の経験としての話を交えながら、雇用の問題を考えていきたいと思います。
わが国の雇用情勢の厳しさにつきましては、バブル崩壊以降の経済の課題があります。2002年度11月の段階の失業率は、全国で5.3%と出ています。近畿地方は6.4%であり、国の失業率を1.1%上回っています。有効求人倍率は(2002年)11月現在、全国で0.57倍となっており、近畿地方で0.47倍となっています。失業率は低い方がよくて、有効求人倍率は高い方が良いのですが、近畿地方の場合は失業率が高く、有効求人倍率は低いという状況です。就職活動をされる方に厳しい話をしますが、敢えてこの数字を出しました。
今、「雇用の流動化」がいわれています。これは、単純にいうと採用のシステムが大きく変わったということです。日本は戦後復興にあたって、アメリカ式の生産方式を導入しました。少品種を多量に工場で生産し、海外に輸出するというシステムでは、基本的に、終身雇用で定年は55歳、一社の中に一つの労働組合、労使で話をしながら会社のために働く、という形でした。給料は年功序列であり、出世をしていくのが働くものの励みになり、競争心をあおることになりました。結果的に今日、世界でも有数の経済大国といわれる日本の国ができました。ところが、国際化で物・人の動きが激しくなってきて、従来の成功した日本型のやり方が国際的に通用しなくなっているのです。現在日本の経済は、一つのものを作り、その価格が日本より安い国があると、情報の伝達の速さで商品そのものが安くなっていく、といった国際的な仕組みの中にあります。雇用の仕方も、日本のやり方ではもたないということになります。従来、中途で社員を採用するというシステムはありませんでしたが、今日、新聞求人を見ると多くの企業が専門的な職種については中途採用を実施しており、即戦力が求められています。また、製造部門の子会社をつくることより、事務的な職種は自分のところの社員ではなく派遣会社に人材を求めていくというような形で、働き方がかわってきています。今まで100人募集をしていた企業が70人になるというように、新規に学校を卒業される方々のチャンスが少なくなっているということです。皆さんの就職の厳しさというのは、「雇用の流動化」という新しい仕組みの中にあります。
本日ご出席の皆さんは在日のコリアン、留学生、外国籍の方々が多いと思います。「働くということ」を考える際、企業の選考における体制の問題があります。本日ご参加頂いている企業の方々は、率先して変革していこうという先進的な取り組みをされています。しかし、学生の皆さんには、日本人の学生の就職が厳しい、という以上に、さらに厳しいということになるのかもしれません。しかし、私は日本人の学生の就職が厳しいということは、ある意味チャンスではないかと思います。
日本の雇用の空洞化として、企業の活動拠点が海外に移って日本では働くところがなくなっており、雇用の流動化に拍車をかけています。最近の「フリーター」という働き方も、雇用の流動化の一つだと思います。社会が要求しているのですから、この働き方が悪いというわけではありませんが、我々の世代では自慢気に話す感覚ではないと思います。このような背景の中で「働くということ」を考えていくのです。働くことを通じて自己実現を図る、ということが最近よくいわれます。自分のもつ仕事をやりとげるということは、社会の仕組みの中で自分の存在感を認めさせるということです。意味のない労働はなく、小さな力の一つ一つでもって世の中が成り立っているのです。我々は、プロのサラリーマン、働き手になっていかなければならないわけですから、就職には一つの思いと覚悟を持ってほしいと思います。
我々の業界には「七五三」という言葉があります。これは、就職して3年経つと、中学校卒業の方は7割の方が辞められている、高等学校卒業の方は5割、大学卒業の方は3割の方が辞められていることを表します。この問題には、就職する入り口の問題が大きいと思います。学校教育をみますと、偏差値教育が中心となっていて職業教育が若干おろそかになっています。大学に進まれるにあたっては、どのような仕事をするのかということと結びつけて考えることが重要です。自分が何をしていこうというのを考えることが必要です。大きな企業の競争の中で生きていくのも一つの道ですし、海外に出て行こう、というのも一つの道です。大学ではインターンシップ制という、企業の中で1ヶ月程勉強し、職種が自分に合うのか合わないのかを勉強するという仕組みができています。日本のインターンシップでは、職種が自分に合っているかどうかを確かめるという建前になっています。改善していく面もあると思いますが、インターンシップ制度には、企業の方々にはチャンスがあれば加わって頂きたいです。
「働くということ」を考える際に、できるかできないかは別として、夢を描き、どのようにその夢を実現していくのか、ということを考えてほしいです。イメージをふくらませ、次々に挑戦していく中で、就職活動のしんどさを経験しながら何かを見出してほしいのです。
その基本となるのは、「就社から就職」へということです。会社を選んで安定、という時代から、職業を選んで就職していくという考え方が出てくると思います。私自身50代ですが、30代でもっと海外での経験をしていれば、もしかしたら海外で働いていたかもしれません。経験は若いうちにするのがよく、可能性も大きいと思います。就職の面で厳しい話をしてきましたが、逆に、皆さん方には可能性があります。その段階でできることは何か、ということです。従来のスチュワーデスは「キャビンアテンダント」にかわりました。また、ペットの美容師である「トリマー」、ワインを扱う「ソムリエ」という職業にみるように、我々の時代と比べて職業の世界もかわってきています。そういう意味では、我々中高年の職業体験を持った人間が語るには、あまりにも知らなさすぎる世界がやってきています。自らで選んで、成功体験、失敗体験を積み重ねていってほしいです。
皆さん方にお願いしたいことは、現実は厳しいということを勉強してほしいということです。残念ながらわが国には、採用に関して外国籍の方々に対する就職差別があるといわざるをえません。しかし、企業側には何のハードルもなく受け入れるという体制をつくって頂かないと、これからの企業の発展がストップしてしまうと思います。障害者の雇用率というのがありますが、わが国の雇用率は1.8%であり、56人に1人を雇うというのが法律の義務です。現在のところ、60%ほどの企業が障害者を一人も雇っていないという状況です。「障害者の雇用の促進に関する法律」が制定されてかなりたちますが、なかなか達成されてない状況にあります。しかし、一定規模の企業は、障害者の問題、在日コリアンの問題、高年齢者の問題に取り組んでいくべきだと思います。
今後、間違いなく若い人達が減っていく時代で日本という国が成り立っていくために、外国人を受け入れていかなければならないという物理的な問題が目の前にあります。今の在日の方々は、苦労の中、社会の中で存在が示されました。新たに外国人労働者として入ってこられる方については、教育の問題、住宅の問題等、あらゆる問題がでてきます。地域において問題が生じることもありました。外国人を社会全体で、文化の面でも処遇の面でもシステムの面でも受け入れることが必要になります。その第一歩として、企業の雇用があると思うのです。外国人の方の中には、一方には、学術的な面、技能の面で入管法上の制度で認められて日本に入られる方、一方では、不法就労として日本に入られる方がいます。この部分では特に、中国、韓国・朝鮮、東南アジア、中近東がそのようなイメージにあり、ヨーロッパとかアメリカにはそのような感覚がありません。経験がないとアフリカ系アメリカ人に身構えるのと同じで、わが国の社会情勢の中で整備しなければならない問題があると思います。そういった面では、若い皆さんには、これから就職するにあたって厳しい面があると思います。しかし、「だからこそ、我々はもっとチャンスをつかむのだ」というふうにがんばってほしいです。幸いそのために次々とシステムができています。就職にあたっては、それぞれのお住まいのところにハローワークがありますので、分からないこと・聞きたいことがありましたらご活用頂きたいと思います。受け入れる側にも厳しい面があり、大人としては若い皆さん方につらい思いで話をしましたが、可能性で世界を支えていくのは皆さんだと思います。就職にあたっては、十分に自分の思いと社会全体の情報を採りいれ、色々な方のアドバイスを得ながら職業人として羽ばたいてほしい、失敗をおそれずに職業・仕事に接して頂きたい、そして新しい世界を切り拓いてほしいと思います。またいつか、何かのチャンスがありまして、ご相談できる日があれば幸いかと思います。ありがとうございました。
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