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早崎 直美 さん
| プロフィール
1951年生まれ。1990年台湾に語学留学、帰国後在日外国人支援活動に関わる。2002年度から、すべての外国人労働者とその家族の人権を守る関西ネットワーク(RINK)事務局長を務める。 |
(RINK事務局長)
RINK:すべての外国人労働者とその家族の人権を守る関西ネットワーク
「身近な事例から在日外国人問題を考える」
2005年3月22日
多民族共生人権教育センター 企業学習会 |
住民票の記載
外国人が日本に来る理由のなかでも多いのは、日本人と結婚して配偶者として日本に来る方です。その場合、外国籍の配偶者は住民票に記載されません。住民票というのは、住民基本台帳法によって戸籍に載っている日本国民を載せるということが決まっています。そのため、外国人は住民票の中には記載されないので、日本人と世帯を同じくしている外国人は、住民票にその方の名前が載らないことで、様々な誤解を生むことがあります。自分の身分を証明するとなると、住民票や戸籍が必要となってきます。このことでいろいろな不便を感じている方、特に日本人と結婚した外国人には多く見られます。
事例:住民票における日本人と婚姻関係にある在日外国人の扱いについて
アメリカ国籍の女性で、日本人と結婚して来日。子どもが保育所に行くことになり、保育所に必要書類を提出。その際、住民票も提出した。しかし、提出した住民票に外国籍である母の名前がありませんでした。保育所職員は誤解し「あなたは正式な結婚をされていないのですか?」と母親に尋ねたため、アメリカ人女性はびっくりしてRINKに相談に来たのです。
この場合、アメリカ人女性が確かに日本人男性と結婚をしていて、その子の母親であることを証明するためには、自分の外国人登録の証明を出さなければなりません。(様々な問題はありますが、現時点では「外国人登録原票記載事項証明書=住民票」という扱いになっている。後述参照)本来ならば、保育所が配慮し、外国籍の親御さんに対しては外国人登録原票記載事項証明書の提出を求めていれば、そういった誤解は生じなかったはずです。
この問題を相談されても、RINKでは根本的にはどうにもできません。しかし、同じようなことを感じられている外国籍の方が多く、その方たちがいろいろな働きかけをして、住民票の本欄ではなく備考欄に、日本人と結婚している外国人の続柄と氏名を書くことができるようになりました。いろいろな声が上がったことで、申し出をすれば記載されるという部分的な改善はされましたが、抜本的な解決にはなりません。さらに、これはあくまでも本人の申し出なので、外国人がその制度を知らなければ書いてもらえないということです。
このようなことが起こる背景には、外国人登録と住民票の法律上の捉え方の違いがあります。住民票は責任を持って国がいろいろなサービスを提供するために住民登録というものを義務付けています。外国人登録はそれに基づいて責任を持ってサービスを提供するということよりも、外国人が今どこに住んでいるのかということを政府が管理したいという性格のほうが強いのです。外国人登録と住民票の違いで1つ例を挙げると、住民票だと住所を変わる際に、前の住所のところで転出届けを出してからしか転入届は受付けられないのですが、外国人登録は今いるところで、転入届を出すだけで、転出届けの必要は全くありません。そのため、一時的な現象として2つの場所で登録している人や、すでに出国しているのに登録されているケースが出てきて、外国人登録制度の改正が求められています。
家族関係の証明
私たち日本人は生まれたときに戸籍に登録され、戸籍に名前が載ればそれが日本人としての証明になり、それを元に住民票を作って制度の対象に当てはめていくという事に慣れています。しかし、他の国が日本と同じような登録制度を持っているわけではありません。住所で把握するのが住民票だとすれば、身分関係を把握するのが戸籍になります。身分を登録する、自分の家系を代々遡って知ることができる制度があるのは、日本、台湾、韓国ぐらいです。ほかの国にはこういった制度はありません。さらに、強固な戸籍制度をもっているのは日本だけと考えてもいい状況になっています。そうなると、外国の方たちは、日本人と同じような感覚で自分の身分を証明しなさいといわれても困ることがあります。
事例:母国に残した前夫との子を日本に呼ぶ際の手続きについて
日本人と結婚し、安定した在留資格で日本にいる人に離婚暦があり、母国出身の前夫との間に子どもがいます。手続きをすればその子を日本に呼び寄せることが可能だが、国によっては子どもの誕生日などを親が正確に把握していない、きちんと届出をしていないということがあります。そのため、出生証明を取り寄せたが、事実と出生証明との間に差異が生じていて、入国管理局に手続きをしに行っても、出生届上の生年月日と身分登録上の生年月日が違うという書類上の不備で、入国管理局から実子かどうかを疑われ、なかなか許可がおりません。
直接対応することは難しいが、近所の人の証言もとれるだろうし、小さいころから子どもと一緒に撮った写真などを証拠として提出するなどして頑張るようにすすめました。正式書類を提出しても不備が出る場合は、過去の事実を証明するしかありません。
国によって身分の証明の仕方が違うとか、登録のあり方が違うということが非常に影響しています。外国の方がもっともっと日本に増えてくると、いろいろなところでトラブルが起きてくると思うので、もう少しものの見方を変えて、世界にはいろいろな登録の仕方があるのだから、臨機応変に対応していくということが求められていると感じています。
帰化・永住の要件
帰化というのは日本国籍を取得して生活するということで、永住というのは在留期限がないので、外国籍のまま日本にいることができて3年や5年という更新もしなくていいということです。帰化と永住では認められている要件も似ています。私の感覚的なものとしては、帰化よりも永住資格を取るほうが難しい気がします。どちらも要件は「日本にどれぐらい住んでいるか」「在留期限がどれぐらいか」ということになります。日本人と結婚されている方は早く許可がおります。5年間日本に住んでいることが証明できれば許可がおりますし、海外で結婚して生活していらっしゃる方も結婚生活が3年以上あれば、日本で1年生活したら帰化申請は認められると思います。ただし、在留資格によって、認められるために必要な滞在年数というのは変わってきます。以前は、留学か技能で滞在資格をとって、日本にずっと住み続ける人の永住は少し難しかったのですが、最近は高度な技術を持つ人材がほしいという日本政府の意向もあり、認められるようになってきました。そういった方の場合は、個人のケースによってさまざまですが、5年で永住資格がとれる人もいれば、10年ぐらいかかる人もいます。このように、ある一定期間日本にいるということと、自立できるだけの経済力があることが最低の条件です。
事例:日本人夫と離婚した外国人女性の永住申請について
日本人と結婚し、その後離婚。日本人の男性(前夫)との間の子どもを1人で育てている外国人女性からの永住申請についての相談。働いているが、外国人女性が子どもを抱えて働ける職場は限られているため、豊かな生活ができるわけもなく、児童扶養手当を受けていた。その女性が永住申請をすると不許可決定がおりた。理由を入国管理局に問い合わせると、児童扶養手当を受けていて自立した生活ができていないというものでありました。
日本人でも、女性が1人で子どもを抱えて生活する場合、児童扶養手当を受けなければ非常に生活が苦しいというのは同じなわけですから、外国人は児童扶養手当てを受けていたら永住できないというのは厳しい判断だと思います。経済要件の他にも、その人の素行が良好かどうか、3年分の納税証明、運転免許を持っている人は運転記録の証明書などを出さなくてはいけません。
そのほかの書類については、それぞれの人のケースによって提出しなければならない書類を指示されます。かなりプライバシーに踏み込んだ調査をされますし、こんなものまで出さなくてはいけないのかと私たちが感じるようなものまであります。
日本語の能力に関しては、永住申請の際にはさほど要求されません。帰化の場合にも、外国の方が心配されるほどは高いレベルの日本語能力が求められるわけではありません。帰化申請をするために法務局に行くと、申請の流れを説明したビデオを見せられます。これがすべて日本語でできていて、この内容がだいたい理解できればいいという判断基準になっています。特別にテストがあるわけではないのでビデオを見て「分かりましたか?」と聞かれて「はい、わかりました」と答えればいいというだけのことです。ですから、一番重要なのは経済面と素行ということになります。
事例:民族学校講師の永住申請が日本社会に貢献していないという理由で不許可になった事について
外国人の在留資格の審査のときに、一番外国の方が悩むのは、許可、不許可の理由を入国管理局がきちんと説明してくれないということです。最近は少しずつ説明してくれるようになってはきていますが「あなたのことを総合的に判断した結果不許可です」という説明の仕方なのではっきりしたことが分からないのです。
民族学校の講師をしていて、就労関係の在留資格で生活していた外国人の男性が、日本社会に貢献したとは認められないという理由で永住申請が不許可になりました。
これからいろんな国の外国人が日本に住むようになり、いずれ自分の国に帰るかもしれない、帰らないとしても自分の国の言葉や文化を持ったまま日本で暮らしてほしいと思う親御さんが増えるのも当然のことで、その人たちのためにがんばって民族学校で子どもたちの指導をしていることが、日本社会に貢献したことにはならないというのは考えが狭いのではないかと思います。入国管理局には広い裁量権が認められているので、この裁量をどうするかというのは、日本政府がどう考えているのかということに左右されてしまいます。
留学生の就職問題
専攻と職種の関係に整合性がないと在留資格が認められないという問題は、最近だいぶ改善されてきています。日本に留学経験がある外国人が日本で就職するメリット、また企業が留学生を雇うメリットというのは、言葉の壁が少ないことと、日本の文化や習慣をある程度把握しているという点にあります。日本語の能力的には同じ人でも、自分の国で日本語を勉強してきた人と日本に留学経験がある人では、日本人のものの考え方と自分の国のものの考え方の両方が分かっているということが大きく違います。
しかし、入国管理局が留学生から就労に在留資格を切り替える際に注目するのは 「この留学生がこれまで何を勉強してきてこれから働く企業でどんな仕事をするのか」ということです。勉強していたこととこれからの仕事内容に整合性がなければならないと厳しく言っていた時期がありました。このおかげで、留学生はなかなか日本で仕事を見つけることができませんでした。ITなど、仕事の内容が分かりやすいものはいいのですが、在留資格の分類で「人文知識・国際業務」という、文系の大学を卒業した方が多くなる在留資格があります。この在留資格は職業の範囲が非常に広く、入国管理局が出している基準も非常にあいまいなので、自分の企業で働いてもらおうとしている人がここに当てはまるのかどうかというのは、企業の方も悩むことが多かったようです。この在留資格で不許可になった事例というのは、勉強してきたことと仕事内容に整合性がないという理由をつけられることが多くありました。
今では勉強してきたことと仕事内容の整合性に関しては緩和されつつあると感じています。しかし、こういったあいまいな部分は、留学生側からすると非常に不安で、企業からせっかく内定をもらっても在留資格の問題をいつも背負って生活しなければならないことになります。ですから私たちは、こんなに細分化した在留資格ではなく働くことを目的に来ているのなら「就労」という大きな枠組みで在留資格を作ってほしいと考えています。
今、新卒の方の内定の時期は早くなっていますが、在留資格を「留学」から「就労」に更新申請を出すのは、卒業から2ヶ月ぐらい前にならないとできません。そうなると、内定はもらえても更新申請はできないし、申請をしても許可されるかどうかわからないという状況になってきます。在留資格の変更が完了するまで働いてはいけませんから、研修をかねて早くから来て欲しいというようなことを言われてもできません。理解がある会社は、在留資格の更新が終わってから来てくださいということになりますが、そんな会社ばかりではありません。そういったことが留学生を悩ませています。
もう1つの問題は、必ずうまく卒業前に就職が決まるとは限ならいということです。以前は、卒業までに就職先が決まらなければ、在留期間を延長することは不可能だったのですが、現在は大学を卒業して就職活動をしていることが証明できれば、短期滞在という在留資格を出して、その期間内は日本にいることを認めるようになりました。短期滞在という在留資格は期限が90日で、これを2回まで、つまり180日までは就職活動の期間として滞在を認めるようになりました。この間は、入国管理局に届け出ればアルバイトもできます。以前はこんなことはなかったので、一度帰国してから、企業に呼んでもらうという形しかありませんでした。以前に比べれば改善されてはいますが、まだまだ留学生の就労問題は簡単ではありません。
専門学校で勉強されている外国人も増えています。その方たちは、専門士という資格をとれた場合、これを使える専門職につけた場合は、就労できる在留資格がとれるようになっています。これを考えると、専門学校を出た方は大学を卒業した留学生に比べて、ある意味では在留資格をとりやすいかもしれません
2002年現在、国が把握している外国人労働者、約76万人のうち入国管理法上、不法残留者とされているのが22万552人です。この中のほとんどの人が3K労働と呼ばれるきつい仕事に就いていると考えられます。
事例:単純労働者の在留資格申請について
単純労働者を雇っている中小企業の雇用主から、自分のところで働いている従業員には在留資格がないが、何とかこの人の在留資格がとれるようにならないか。または、自分たちの養子にすれば日本にとどまれるようになるのではないかという相談があります。
こういった相談の場合、どうしようもないことがほとんどです。
日本政府は、たとえこの外国人が長い間日本に滞在していたとしても、単身者の場合や単純労働に従事している場合は、日本にいてもらうことはできないという判断を下します。そのため、入国管理局にこの人が出頭した場合、強制的に帰らされることになります。また、成人を養子縁組しても在留資格を得ることはできません。こういった説明をすると非常にがっかりして肩を落として帰っていかれる方が多いです。
専門技術があるなしに関わらず、雇用主がその人を必要だと認めた場合には在留資格を認めるようになれば、こういった問題は解決されると思います。76万人の外国人労働者のうち、専門的・技術的分野の就労可能な在留資格を持っているのが17万9,639人です。このほかは、日系の方や日本人の配偶者も含めて大多数が単純労働者と考えていいと思います日本政府は建前として単純労働者は受け入れないといっていますが、実態は圧倒的に単純労働者の方が多いのです。現実を見つめていかなければ、今後外国人に対する問題はもっと大きくなっていくと思います。
労働基準法関係法令については、日本人も外国人も関係なく適用されます。これは、在留資格がない場合でも同じです。
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