多民族共生人権教育センター
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韓国における野宿者問題

 公園、河川敷、高架した等の公共空間でテント等の利用による生活を余儀なくされている野宿生活者の姿は、今日、東京や大阪などの大都市だけでなく、地方都市でも普通に見られるようになっている。堺市にある筆者の職場でも早朝、アルミ缶を集める野宿生活者をみることは日常となっている。全国で2万人は超えている。大阪では、大阪市内だけで15,000人、大阪市以外に約840人を数え、全国でその数はトップである。国は、公園、河川敷、河川敷などでの生活を余儀なくされている人々を「ホームレス」と規定し、対応策しようとしているが十分ではない。しかも、なかなか進展していないのが現状である。
 路上での生活を余儀なくされている人々を含む「ホームレス」問題は、日本だけの問題ではない。イギリス、フランス、ドイツ、アメリカ等の欧米やここで紹介するアジア先進国・韓国においても深刻な社会問題となっている。
 韓国における野宿者の公式的用語は、IBM勧告以前は「浮浪者」であり、治安維持・公序良俗の観点から保護施設で収容・保護させていた。その結果、路上にいる「野宿者」数は何百人程度でしかなく、社会的関心は低かったとされている。

 しかし、1997年末、IBM勧告以降の失業により路上で生活せざるを得ない野宿者の増加に伴い、「失職野宿者」という用語が登場し、問題の新しさが指摘され、大きな社会的問題として認識されるようになった。1998年初頭、野宿せざるを得なくなった者はソウル駅周辺だけでも約2,000人に上ったとされている。ソウル市近くの公園でのテント生活、駅構内や地下鉄の通路で寝泊りする光景が日本と同じように見られた。しかし、対応は極めて早かった。支援団体による無料の炊き出しの開始や国・自治体との共同による極めて早い政策的対応(「希望の家」、「自由の家」などのシェルターの設置、職業紹介の実施等)によって路上での生活を強いられている人々は大幅に減少した。我々が最初にソウルにいった1999年2月、公園にはすでに野宿者のテントはみられなかった。

 2000年1月現在、全国の野宿者は約5,500人と推定されており、このうち約5,000人が全国150ヶ所の野宿者ための宿泊施設を利用している。残りの約500人は路上で生活している。路上で生活している野宿者数は、全国で1999年8月の約1,000人から約500人水準に減少している。地域別では、ソウル(3,870人、70%)、釜山(720人、13%)、京畿(250人、5%)、大邱(220人、4%)、仁川(170人、3%)、大田(120人、2%)等の主要大都市地域に集中している。そして、1999年12月現在、チョッパン(ドヤ)や漫画房(24時間営業の漫画を読める漫画喫茶のような店)等を利用している野宿生活直前の野宿者の予備軍は約5,000人と推定されている。

 しかし、運動・支援団体によれば、路上で野宿をしている者は、ソウル市だけで400〜500人に上る。【表:参照】

【表】地域別野宿者発生状況(1999年12月現在、単位:名)

区分
ソウル
釜山
大邱
仁川
大田
京畿道

全羅北道

5,500
(100%)

3,870
(70%)
720
(13%)

220
(4%)

170
(3%)
110
(2%)
250
(5%)
160
(3%)

施設利用者

5,000
3,620
620
180
130
80
230
140
路上生活者
500
250
100
40
30
20
20
20

注)韓国保険福祉部「2000年 野宿者支援事業計画」(2000年1月)

 昨年3月の厳寒のソウル市で、我々はカップ麺とバナナ等の食料品をもって支援団体の「夜まわり」に参加した。野宿者の集中している場所は10数か所あるといわれている。我々は地下道でダンボールを敷き、毛布に包まって寝ている野宿者を多数みることができた。

 その後、韓国経済が立ち直り、失業率が低下してきているにもかかわらず、施設入所している者を含む野宿者数は減少せず、社会復帰にも時間がかかるということが徐々に明らかになる中で、臨時的な野宿者支援対策の継続にとどまらず、長期的視野に立った野宿者防止策としての施策展開の必要性が支援団体等から強く求められるようになった。野宿者への転落防止策として、65歳未満を制度から排除していた生活保護法の改正問題とそれである。その背景には、従来のいわゆる「浮浪者」と「失職野宿者」との間に階層的差異が少ないことやビニールハウスビレッジ(ビニールと毛布で造られた不法占拠地域)やチョクパンなどで暮らす貧困層の存在がある。2000年10月1日、生活保護法にかわり国民基礎生活保障法が施行された。稼動年齢層に対しても就労を条件に生活保護適用を規定した新しい制度である。社会的問題の解決に早急に対応し、既存制度の大きな転換をも果たした韓国の野宿者対策の今後の動向が注目されるのである。日本においても、野宿者の増加に歯止めがかかっていない現状の中で、生活保護法の改正が指摘されている。野宿者への生活保護適用問題や外国人に対する準用規定など多くの問題をもっているだけに注視する必要があろう。

                     大阪府立大学社会福祉学部 中山 徹

 

 

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