多民族共生人権教育センター
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「在日韓国・朝鮮人の社会保障制度の諸問題」

日本における外国人に対する社会保障制度の問題点

 社会保障制度の充実は人が健康で文化的な生活を営むために欠かすことができない。日本では戦後、生活保護制度を始めとする近代的な社会保障法が樹立された。しかしそれらは原則として日本国民を適用対象としている。日本における外国人に対する社会保障制度に関しては、運用面を含め多くの問題点を抱えていた。「非正規」外国人への医療保障、生活保護に関しては後退さえみられる。

 1981年10月の難民条約批准に伴う国内法の整備により、社会保障における外国人排除のための国籍条項が撤廃された。この結果、児童手当・児童扶養手当・特別児童扶養手当の児童関係三法も在日外国人にも適用されるようになり、国民年金にも加入することが認められるようになった。しかし国民年金の適用状況は日本国民と同等ではなかった。高齢期にある定住外国人に対して国は何の救済措置もとらず無年金者のまま放置していた。今後、無年金者となる可能性のある人々も相当数に達すると考えられるにもかかわらず適切な手段を講じていない。

 1993年から1994年にかけて行った庄谷・中山による大阪生野在住の在日韓国・朝鮮人を対象とした実態調査では、年金年齢に達した者のうち約69パーセントが無年金状態であるということが明らかになった。高齢在日外国人の生活の特徴は、その不安定性、低位性である。これに対する、わが国の社会保障の制度的な欠如、あるいは不充分性が問われている。国の制度の立ち後れ、後退の中で、在日外国人を日本人と同じ地域住民として位置づけるため地方自治体の役割はますます大きくなるであろう。

 坂口厚生労働大臣は2002年1月11日の閣議後の会見で、国民年金に学生や専業主婦が任意加入とされていた時代に未加入のまま障害を負い、障害基礎年金を受けられない「無年金障害者」の問題に対して、「政治では大きな問題になる。今年中にも結論を出したい」と話し、年金制度の枠外での福祉施策などを含めた検討に入る方針を明らかにした。制度の谷間で無年金状態になっている人達への早期救済の必要性を示したものである。これが実現すれば、在日外国人の無年金問題はさらに浮き彫りとなる。「在日」高齢者の無年金問題は早急に取り組まれるべき課題である。現行のままでは、在日外国人の政府に対する不信感は消えることがない。2000年度から開始された介護保険制度においても低年金や無年金による保険料負担や利用料負担が重荷となり、無保険状態の発生が懸念される。

 日本社会においては、外国人労働者の受け入れ体制が整備されていないというだけでなく、歴史的経緯のある在日・韓国朝鮮人問題さえ放置している現状がある。未だ、日本は国家の枠組みが強く、民主主義体制が未成熟である。在日外国人は生活のあらゆる場面で困難に直面している。地域には様々な文化的背景をもつ人が暮らしているということを前提に、少数者にも配慮がゆきとどいた「多民族共生社会」を目指して制度の整備や発想の転換が求められている。

 また、2002年は日韓国民交流年となっている。これを契機に、NPO活動など民間相互の交流を先導とする日韓文化交流の一層の推進を目指していくべきであろう。今日、日本と韓国の関係においては、様々な交流事業への両国民の参加により、相互理解が一層深まり、21世紀におけるパートナーシップの構築が進むであろう。これは日韓関係だけにいえることではなく、国際社会における日本の果たすべき役割が問われているのである。例えば、それぞれの国の歴史的背景は異なるが、欧州連合では地域統合がなされている。つまり、国家の枠組みを超えて地域と地域、住民相互の交流が行われる国際協調の時代となっている。21世紀においては、生活する場が異なっても、国籍という枠組みにこだわらず、人類普遍の社会保障の権利を確立させるための柔軟性をもつことが期待されている。

多民族共生人権教育センター理事 神戸女子大学教授 庄谷 怜子
関西学院大学大学院博士課程前期課程 朴 星 麗

 

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