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在日韓国・朝鮮人に対する社会保障制度−無年金問題について−
日本の社会保障の国民年金制度について、在日韓国・朝鮮人における「無年金」問題がなぜ創りだされたのか、その背景と問題点について考察する。歴史的な形成史をもつ在日韓国・朝鮮人などの外国人住民は年金加入率が低く、無年金者が多い。これは、日本政府が国民年金制度から外国人を排除してきたからである。1959年国民年金法が制定された。厚生年金、共済年金などの被用者年金は既に創設されていたが、自営業者や専業主婦、学生等の雇用されていない者が加入できる年金制度はなかったため、これにより、日本は名目上「国民皆年金」を実現させた。在日韓国・朝鮮人をはじめとする在日外国人はこの国民年金制度が重要な意味をもつことになった。なぜなら在日外国人に対する被用者年金への加入には事実上の制約があったからである。厚生年金、共済年金等の被用者年金には国籍条項がなく在日外国人も加入することができたが、外国人は企業からの就職差別があり、また、公務員採用の道は狭いものであった。在日外国人は国民年金制度の創設時には、国籍条項により、加入権を得ていなかった。そのため、年金を受給する年齢に達しても理不尽な無年金状態に陥り、多くの高齢在日外国人は生活困難を強いられてきた。国民年金は老齢・死亡・障害等により、生活をしていく上で必要となる収入が途絶えた時の所得保障という在り方をとっている。しかし、在日外国人は、以下のような理由で生活権にかかわる年金に加入することすら認められなかったことになる。
国民年金制度の創設<1959〜1981年>
国民年金への加入には、年齢要件、居住要件、国籍要件が必要であった。年齢要件とは、国民年金に加入できるのは20歳から60歳までの間であり、老齢年金の受給資格は25年以上の被保険者期間を必要としている。居住要件とは、日本国内に居住している者に限られるということである。国籍要件とは、国民年金に加入できるのは日本国民に限られるということである。例え日本で生まれ育ったとしても、外国籍の者は加入を認められなかった。この三要件を満たしている者が国民年金に加入できたのであり、在日韓国・朝鮮人は、日本に居住しているが、日本国民でないということで国民年金に加入したくても認められなかった。(ただし在日アメリカ人は、1953年に締結された日米通商航海条約第3条の「相互内国民待遇」の規定に基づいて、国民年金に加入することが認められた。)
社会保障の権利はその本来のあり方として人間はその生きている所で保障されるべきであり、この権利が与えられないということは人権上の重大な権利問題が付随することになる。もしも、世界各国がこの方針をとれば、何処においても外国人は、自らの本国からは「居住要件」により、居住国では、「国籍要件」により排除され、それらの人々にとって社会保障は無きに等しくなる。
日本国民であれば、全ての者が加入できて年金が支給されたわけではない。年金は、加入していた期間中の事故(老齢・死亡・障害等)に対して支給され、既に事故が生じている場合には支給されないのである。これでは、制度の谷間に置かれた人が無年金状態になってしまうので、日本国民の場合には経過措置を設けた。
即ち、老齢年金受給資格が生じるための資格期間の短縮措置、無拠出制の福祉年金の創設(老齢福祉年金・母子福祉年金・準母子福祉年金・障害者福祉年金)である。福祉年金は、保険料を納めなくても公費で支給される無拠出制の年金であるが、これらの支給対象者は日本国民に限られていた。この時、日本人は福祉年金を受給していたが、在日韓国・朝鮮人は加入権もなく、高齢者や母子・準母子家庭、障害者は、福祉年金からも排除されたのである。
籍要件の撤廃<1982〜1986年>
1975年の南北ベトナム統一により、難民が大量に発生し、その受け入れが国際的問題となってきた。日本はそれまで全く難民を受け入れておらず、国内外から日本の外国人政策、とりわけ難民受け入れ体制について、非難が集中することになった。これを受けて1981年に日本はようやく難民条約を批准した。在日韓国・朝鮮人の権益擁護闘争において年金問題は、重要なテーマのひとつであったが、この時まで国民年金法の国籍条項の壁は崩せなかった。それが、日本政府が難民条約を批准することにより、国民年金法の国籍条項が撤廃されることになった。つまり、在日韓国・朝鮮人を中心とした闘いに応えたというより、日本政府が、国際的な体面をそれなりに保つ必要があったということである。
難民条約では、内外人平等の原則をうたわれており、国内に居住する外国人に対しても日本国民同様の社会保障を与えることが定められていた。したがって、社会保障関係法規から在日外国人を除外していた国籍条項は同条約に抵触することになるので改正された。国民年金制度の創設から20年以上を経て、在日韓国・朝鮮人をはじめとする全ての在日外国人にも加入が認められるようになった。しかし、制度の狭間となる以下の問題を残したままでの適用である。
1)1982年1月1日の時点で35歳を超えている在日外国人は、国民年金には加入できるが、60歳までに被保険者期間25年を満たすことができないので、老齢年金は支給されない。
2)1982年1月1日の時点で60歳を越えている在日外国人は、国民年金に加入することもできないし、老齢福祉年金も支給されない。
3)1982年1月1日の時点で母子家庭・準母子家庭の状態になっている在日外国人には母子年金・準母子福祉年金は支給されない。
4)1982年1月1日の時点で20歳を越えている在日外国人障害者には障害福祉年金は支給されない。
国民年金への加入権を得られるようになった在日外国人に対しては、日本人に対する国民年金制度創設時におこなった経過措置を講じなかったので、このような制度の谷間に置かれる人は、無年金となった。日本の植民地支配のもとで苦労した在日高齢一世たちこそ「特別な老齢年金」が給付されるべきだと考えられる。しかし、1982年の法改正ではその人々は再度切り捨てられた。この法改正時に35歳以上の在日外国人を一律に排除することに関して、日本政府はその後、以下のような改正をしたが、1982年の国民年金法の改正は、それまで排除されてきた在日外国人に対する配慮を欠いた不十分な改正であった。
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