多民族共生人権教育センター
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新国民年金制度の実施<1986年〜 >

 1986年から新国民年金制度が実施された。これは基礎年金の導入による制度体系の再編成、給付と負担の適正化、女性の年金権の確立、障害年金の改善を主な柱とする国民皆年金体制発足以来の大改正であった。新制度は、自営業者や農漁民と労働者の年金の種類に関係なく、国民全てが国民年金に加入する基礎年金を創設し、厚生年金などは国民年金と合わせて加入する2階だてとなっている。したがって、厚生年金加入者は厚生年金と国民年金の両方に加入し、その配偶者は国民年金に強制加入することになった。

 国民年金制度の大改革によって前述の在日外国人に対する4つの問題はどうなったのかというと、1)の問題が一部解決されたのみであった。しかしそれは、在日外国人を救済するために解決されたのではなく、日本国民の専業主婦等を救済するために創られた制度が、法解釈上、在日外国人にも適用されたにすぎない。即ち、1986年4月1日の時点で35歳を越えている専業主婦等は、60歳までに被保険者期間25年を満たすことができないので、国民年金に加入したとしても老齢基礎年金は支給されないことになる。つまり、1982年に在日外国人を国民年金の適用対象にした時の1)と同じ状況になってしまうのである。このまま放置しておけば専業主婦等は無年金になるので、政府は「カラ期間制度」を設けて無年金にならないようにした。これは、国民年金への未加入期間をとりあえずは加入していたことにし、その上で実際加入した期間を合わせて25年以上あれば老齢基礎年金を支給するという制度である。但し、カラ期間は年金額には反映されない。この改正で法解釈上は、当然のことながら在日外国人にも適用されるので、前述の1)の問題の一部は解決されることとなったのである。「一部」というのは、1986年4月1日の時点で60歳を越えている在日外国人は国民年金に加入したとしても老齢基礎年金は支給されない。換言すれば、1926年4月1日以前に生まれた在日外国人は、老齢基礎年金も老齢福祉年金も支給されない状態のまま放置されている。

 日本人にも無年金者はあるが、在日韓国・朝鮮人の場合無年金になった原因が質的に違う。日本人の場合、前提として国民年金加入が認められていたが、任意加入の時代があったため加入していない場合等に無年金状態になっているのであり、在日韓国・朝鮮人の場合、国民年金の加入が認められなかったために無年金になっているのである。

 また、帰化すれば、「日本国民」になるから国民年金に加入でき、老齢年金・障害者年金をもらえるように考えられるが、必ずしもそうではない。塩見訴訟はその一例であり、帰化日本国民である塩見さんは全盲、高齢という状況にあるにもかかわらず、障害が帰化以前に起こっているという理由で敗訴している。在日韓国・朝鮮人障害者は、国のこのような排外主義的姿勢にもかかわらず、今なおねばり強く交渉を重ね、国民年金制度の抜本的改革の実現を求める働きかけを続けている。これらの働きかけもあって、各自治体は独自の無年金外国籍障害者・高齢者に対する「給付金」施策を行っている。この施策は、本来国が義務を負うべき無年金者救済を自治体が補っているものである。国が国民年金法の改正を行わない以上、評価されるべきものといえるが、給付金額においては国民年金の額と同等ではなく、その福祉年金額にも達していない。国の制度改正による抜本的解決が望まれる。在日外国人の無年金の問題は「国際化」社会を迎える日本の姿勢とも大きく関わっている。「国際化」とは外国の商品が溢れていたり外国人が多数住んでいたりすることではない。真の「国際化」とは在日外国人の人権が日本人と同様に守られることである。理屈にならない理屈でもって在日外国人を無年金状態にしている現状は日本が「国際化」を掲げるには値しないであろう。 

主要参考文献
○ 庄谷怜子・中山徹『高齢在日韓国・朝鮮人』1997,御茶の水書房  
○ 朴鐘鳴『在日朝鮮人 第2版−歴史・現状・展望』1999,明石書店
○ 田中宏『在日外国人』1995,岩波書店                その他
  
 今号の会報を書かせて頂くにあたり、卒業研究論文の一部を抜粋して要約した。私は卒業研究論文『共生社会における社会保障の権利−在日韓国・朝鮮人問題をめぐって−』を通して、自分自身のルーツである在日・韓国人の社会保障の権利問題を中心として、年金制度、介護保険制度と「在日」社会の関係性について検討してきた。そのような中で、今の時代における自分の役割、社会貢献について強く意識するようになった。社会福祉学を通して「在日」問題に取り組む中、近年顕著となっている在日外国人問題に関心を抱いた。今後、在日外国人問題をめぐる多民族共生社会における社会福祉の課題について学び、日本における歴史的存在である在日韓国・朝鮮人問題研究を原点に据えて「多民族共生」という大きなテーマに取り組んでいきたい。   

                               
朴 星 麗(関西学院大学大学院博士課程前期課程

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