多民族共生人権教育センター
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オピニオン 「NPOと企業の新しい関係」 岡崎慎一郎

「NPOと企業の新しい関係」   

 NPOは社会的ミッションの達成を目指す一つの事業体である。社会的事業という場合、人々が社会的な課題に対して何らかの企てを立ててその解決に向け継続的に活動を行うことを指す。それは非営利のNPO形態で行われるばかりでなく、営利の会社形態で行われることもある。市民が担うNPOの活動は時代の流れの中で多様化している。

 NPOを(慈善型)、(監視・批判型)、(事業型)の3つに区分し、こういったNPOが企業とどのような関係を持っているかを、一橋大学谷本寛治教授の論から、次の4つのパターンで考えてみよう。
(1)企業による(慈善型)NPO支援
(2)(監視・批判型)NPOによる企業活動のチェック
(3)調査・分析を行う(事業型)NPOによる企業活動の評価
(4)社会的事業を行う(事業型)NPOと企業の競争/コラボレーション
この4つの関係パターンについて、主にアメリカの社会経済システムにおける事例を踏まえながら考えてみる。 

 (慈善型)NPOと企業との関係は、企業の社会貢献活動として寄付の贈与が基本である。寄付という場合、現金によるもののみならず、技術的支援、物品の寄付、さらに従業員のボランティアといった非現金によるものも含まれる。ドナー−ドニー関係にある。

(市民運動型NPOによる企業監視・批判)NPOと企業の関係は、反社会的行為、採用・雇用において人種差別・女性差別をしている企業への批判を始め、環境問題・消費者問題などに関して、企業活動を批判し監視・要求していく市民の運動が展開された。企業に対する直接的な批判運動がボイコット運動、株主行動、ロビー活動、訴訟などの手段によって行われた。この種の市民運動は、組織化、専門化、国際的ネットワーク化が進んでおり、グローバル化した企業を監視し批判する存在としてその社会的・政治的役割は大きく、社会経済システムにおいて重要な牽制力となっている。

 NPO(評価団体)による企業の社会的評価は、直接行動ではなく、消費や投資の力を利用し、市場メカニズムを通して企業にその意思を伝え影響を与えようとする行動が活躍している。NPOが企業と消費者・投資家の間に立って企業活動の社会的側面を専門的に調査し評価した情報を伝達することを事業として行っている。特に勇名を馳せたNPOとしては、ニューヨーク市のCEPで、スーパーマーケットで売っている商品を製造している企業が、社会的な責任をどの程度果たしているかを評価するガイドブック“Shopping for a Better World”を発行し、社会的に大きな影響を与えている。また、社会的責任投資(SRI)についてはNPOが巨大な資金を運用しているが、我が国でもNPO(パブリックリソースセンター)が社会貢献ファンド「あすのはね」をスクリーニングしているのは広く知られている。環境問題・雇用問題・取り引きにおける社会的公正・採用や昇進上の差別・企業市民度その他、多岐な項目が評価基準として取り上げられている。

 NPOと企業との競争/コラボレーション、事業型NPO形態で事業としてソーシャルサーヴィスを有料有償で提供するものが増加している。様々なマネージメント機能をサポートすることを事業とするNPOや企業コンサルティング等も増えている。NPOと企業がコラボレーションすることによって、双方にメリットが得られる。例えば企業側は社会的事業やフィランソロピー活動を行うにあたってNPOと協力することで、具体的問題領域への橋渡し役・調整役を得ることができる。さらに社会的サーヴィスのノウハウを学ぶ、従業員がボランティア・スピリットを得る、企業の認知度・評判を高められる、などである。企業とNPOは本来異なる目的や行動原理を持っているが、事業目的を達成するためにNPOが企業を設立することもあれば、逆に企業がNPOを設立することもある。さらにNPOは企業を批判するだけではなく、より積極的に政策提言するアドボカシー型のNPOが成長してきている。特に企業活動を調査し評価するNPOが一般消費者や投資家に情報提供や政策提言をしており、そういった活動が社会的に支持されるようになってきている。日本においてもNPOを「圧力団体」と認識するのは大間違いで、社会的責任投資(SRI)を始めとする投資家の拡大で、NPOが企業を変える時代がやって来たことを正しく認識するべきである。気が付けばNPOが「大株主」になっていることもあり得る時代となった。

多民族共生人権教育センター理事  岡崎慎一郎

 

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