多民族共生人権教育センター
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オピニオン 2003新年辞

2003年 新年辞

 つつがなく、2003年の新春を迎えられたことをお喜び申し上げます。「多民族共生人権教育センター」(略称「メーレック」)は、本年も日本人と外国籍市民が差別のない豊かな社会で暮らせる「多民族・多文化共生社会」に向けてまい進する所存でございます。旧年に倍するご支援、ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。

 さて、21世紀は「人権の世紀」と言われてきましたが、2001年、米国での「同時多発テロ」後のアフガン報復攻撃を境に、紛争を「力」で解決しようとする考えが台頭してきました。日本国内でも、そうした考えから、昨年、朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)の「ら致事件」が明るみに出た以降、「邦人保護」を口実にした「国力増強」の主張がまかり通るようになりました。そうした主張は「イージス艦」を簡単に海外に派遣し、「有事立法」制定への動きとなって、国民を「戦争」の方向へ誘導し始めていると危惧されています。米国が主唱する「力」の論理が日本でも大手を振り始めた証左であり、警戒心が求められています。
 他方、昨年は「ワールドカップ日韓共催」が盛り上がり、「共生」が社会的評価を得たことは大きな出来事でした。大遅刻をして一躍有名になったカメルーンチーム、また、ブラジル、イギリス、フランス、韓国など、各国チームの選手個人の人気も高く、とかく欧米人に集中しがちな日本人の目が、かなり多様になったように感じられました(反面、過ぎたナショナリズムには閉口しましたが)。「ワールドカップ日韓共催」が作り出した「共生」にはお祭り気分も多少入っていますが、「力」を振りかざすよりましです。しかも、「対立」するのではなく、確実に「共生」の輪を広げました。今後は、私たちがその輪をどう活用するのかが問われています。

 昨年、地域社会では「多民族・多文化共生」が進展したでしょうか。滋賀県米原町で外国籍住民にも住民投票権が認められ、全国で初めて投票しました。昨年の「多民族共生人権研究集会」で、その様子を村西米原町長さんから講演して頂き、「共生」社会の前進に大変、励まされました。その後も、外国籍住民に住民投票権を認める自治体が増え、外国籍住民は地域で確実に「住民」として位置づくようになりました。こうした成果の反面、社会には外国人を犯罪と結びつける差別的意識が、まだまだ根強く存在します。「京都銀行」による「犯人は外国人風」と、外国人への注意を呼びかける「防犯ポスター」の掲出や、「コーナン」による外国人ピッキング事件を殊更強調して危機感を煽り、それを販売促進につなげる手法などは、その代表的な事例と言えます。こうした差別意識を生産助長する背景には、石原東京都知事による公然たる差別発言や扇動、そしてそれを許す社会、加えて、繰り返されるマスコミによる差別報道などがあると指摘せざるを得ません。外国人の労働実態や強制送還の課題も、外国人の人権の根幹を揺るがす由々(ゆゆ)しき問題として、今なお、大きな課題としてあります。

 2003年は、こうした課題を確実に克服していかなければなりません。今年、新たに生起すると予測される課題は、北朝鮮に帰国した「在日帰国者」と「日本人妻(夫)」並びにその家族が、北朝鮮を脱出した後、再び日本で暮らしたいと入国を希望するケースが増加することです。さらに、北朝鮮国民が「難民」として日本へ保護を求めるケースも増えると思われます。こうした人たちの入国や入国後の生活支援は、「共生」の視点からも大きな課題になるに違いありません。私たちは、最近のマスコミによって刷り込まれた北朝鮮に対する「偏見」を捨て、改めて正しい知識を身につけなければ、こうした課題に対処できないでしょう。また、昨年末、中国帰国者が日本国を相手に起こした集団訴訟は、国家への問題提起と同時に、地域社会への問題提起でもありました。訴訟の背景には中国帰国者の生活保護率が異常に高いことがあり、それは、それだけ地域社会から阻害されていることを物語っています。中国帰国者にも、ら致被害者と同じように「援護法」と地域社会の暖かい支援が必要なのです。さらに、昨年来より課題として浮上しながらも国会審議に入れなかった「特別永住者等の国籍取得の特例に関する法律案」が、この通常国会で審議されようとしています。この法案が成立すれば、「日本人」の多民族化が一気に進むものと見られています。在日韓国・朝鮮人の中からは、この法案を「同化政策」と危惧する声が上がっていますが、近年、年間に1万人以上が帰化によって日本国籍を取得している現状を直視すれば、こうした危惧が共感を呼ぶのは難しいように思われます。むしろ、在日韓国・朝鮮人と「韓国系日本人」が共同して民族的権利を求めていく、「共同」の道を歩む時期に来ていると受け止めるべきではないでしょうか。そういえば、昨年の「多民族共生人権研究集会」の打合せ時に、「多民族・多文化共生法の制定を」という話が出ていました。今年は、在日韓国・朝鮮人だけでなく、全外国人の人権保障を網羅した「多民族共生人権法案」を策定する動きが出てくるかも知れません。

 「メーレック」は、今年も課題山積ですが、みなさまとともに着実に前進していきたいと思いますので、どうか、本年もよろしくお願いします。

多民族共生人権教育センター理事長 李敬宰

 

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