多民族共生人権教育センター
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オピニオン 『ビデオ「いまじん〜多民族・多文化共生への道」完成にあたって」

ビデオ「いまじん〜多民族・多文化共生への道〜」 完成にあたって

 「多民族・多文化共生」の社会を実現していくためには、何が必要なのか。
そのことを考えるきっかけとするために、昨年より、多民族共生人権教育センターを中心として制作委員会を組織し、現在日本に住む外国人をとりまく問題についての入門となるビデオを制作してきた。
 どのようなビデオにするのか。議論が重ねられた結果、従来の人権啓発ビデオにありがちな、「人権侵害の現実を訴え、人権尊重を説く」といったスタイルではなく、マジョリティ(多数派。社会的に優勢にあることを指す)である日本人が、しかも差別や偏見とは無関係であると思っている多くの日本人が、自分たちの問題としてこの社会の重要な問題について考えるきっかけになるようなもの、ということをコンセプトに制作することとなった。そして、ビデオには、さまざまな困難を乗り越えて「多民族・多文化共生」を模索する人々のいくつもの取り組みが収められた。

「ことばの違う場所に住むとき、どのような困難があるのか想像しよう」
「自分がまわりの人々に受け入れてもらえないとき、どんな気持ちがするか想像しよう」「さまざまなちがいを持った人々と共に生きるとは、どういうことか想像しよう」

 そして、「多民族・多文化共生の社会とは、どんな社会なのか想像しよう」

・・・完成したビデオには、そんな意味を込めて「いまじん」とタイトルがつけられた。
 しかし、そのビデオの完成後、私の手を離れたところで制作されたそのチラシを見たとき、私は少なからずショックを受けた。それは、タイトル「いまじん」の上に「在日外国人問題の入門ビデオ」と書かれていたからだ。なぜショックを受けたのか、おわかり頂けるだろうか?

 私はこの「在日外国人問題」ということばに、この社会の大きな問題の一つが隠されている様に思えてならないのだ。それは「障碍者(しょうがいしゃ)問題」「高齢者問題」といったことばも同様である。つまり、これらのことばには、あたかも「在日外国人」や「障碍者」「高齢者」に問題があるかのようなニュアンスが含まれており、実際にそう思っている人も少なくないのではないかと思うのである。
 「在日外国人」や「障碍者」「高齢者」をとりまく事象が「社会問題」とされるのはなぜか。それはこれらの人々が、この社会において、いくつものハンディキャップを抱えているからである。しかし、その「ハンディキャップ」の多くは、実はこの社会がつくりだしてきたものだともいえる。「郷に入っては郷に従え」ということわざに象徴されるように、同質性を重視し、「ちがいを持った人々」を排除しようとする意識や、マイノリティ(マジョリティの反意語)の人々への配慮が無い事から、物理的に、制度的に、心理的に、さまざまな「バリア」が生まれ、「ハンディキャップ」を背負わされる人々が生みだされることになる。つまり、「在日外国人」や「障碍者」「高齢者」に問題があるのではなく、それらの人々をとりまく「社会」に問題があるのだが、大多数の人々がそうは思っていないところに、さらに大きな問題があるのではないだろうか。

「日本での生活が不自由ならば、外国人は自分たちの国へ帰ればいい」のか?
「目が、耳が、身体が不自由ならば、ある程度我慢するのは仕方がない」のか?

 どのようなちがいを持った人もひとりひとり尊重されなくてはならないのは当然のことだが、さらに、まずはマジョリティの立場にある人間が、自分の意識や考え方を見直してみる必要があるだろう。
 たとえば、障碍者のためにスロープをつくり、車椅子対応のトイレをつくる、と考えてしまうとどうしても、「障碍者のためにわざわざ」というように思ってしまう人が出てきてしまう。しかしそうではなく、段差がなく、車椅子も入れるトイレがあれば、誰もが安全に、ゆったりと気持ち良く使えると考えれば、それはすべての人にとってプラスになるものなのだ。
 マジョリティの立場にある人々が、マイノリティの立場にある人がいることに気づき、その人たちの社会参加を阻害しているバリアを取り除いていく事によって、少しずつ、誰もがより暮らしやすい社会に変わってゆく。そして、多様な人々が平等に社会参加できるようになれば、それによって、より豊かな社会が生まれていくのではないか。そうしたプロセスを一歩一歩進んで行くことが「多民族・多文化共生への道」につながっているのではないだろうか。
 ビデオ「いまじん」がその道へのひとつの入口となることを願っている。

 最後に、私の指摘の後、件のチラシは廃棄処分となった。それは資源のムダであるかもしれない。が、このムダもまた、「多民族・多文化共生への道」につながる一歩であると思っている。

多文化共生センター・大阪 岩山 仁

 

 

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