| 
人権・多民族共生という基準で企業が評価される21世紀 現在、世界的に「企業の社会的責任」(CSR:Corporate
Social Responsibilityの略)が注目されている。その中で、人権という観点は重要な位置を占めており、多くの企業が対応を迫られている。つまり21世紀は、企業が人権・多民族共生という基準で評価される時代になるといえる。 企業の社会的責任(CSR)が注目される背景には、次のようなものがある。経済のグローバル化や規制緩和が進む中で、国境を越えて活動する企業が、例えば途上国の児童労働や強制労働を利用して利益を追求することを放置していいのかという問題が提起されてきた。また企業による環境破壊や倫理観に欠けた不祥事に対するNGOなどの批判も強まってきた。そのような中で、国連などの国際機関やNGOが、企業の社会的責任を確立するための努力を積み重ねてきた。国連は、アナン事務総長の提唱で、2000年にグローバル・コンパクトを発表した。これは人権、労働、環境に関連する9原則からなり、各企業にこの遵守を求めた。またGRI(グローバル・レポーティング・イニシアティブ)は、2000年にサステナビリティ・レポーティング・ガイドラインを発表した(2002年に改定)。これは社会的責任を重視する企業こそ持続可能性(サステナビリティ)をもつという考えに基づき、企業報告書において記述することが望ましい指標として、経済、環境、社会という3要素のガイドラインを明らかにしたものである。この社会的要素において人権に関する項目が設定されており、児童労働、強制労働などへの言及が求められている。 これらの国際的な流れを受けて、日本でも社会的責任への取り組みが増えている。日本経団連や経済同友会、関経連がこれまでの企業倫理についての対応に加えて、CSRへの取り組みを行っている。経済同友会では2003年春に発表した「第15回企業白書」においてCSRを重要なテーマとして取り上げ、その企業評価基準としての「評価シート」を発表した。その基準には、女性・外国人の管理職・役員がそれぞれ全体に対して何%を占めるか、過去3年間で増加しているか、3年後の目標は何%かを記載する項目がある。また、障害者雇用率についても、過去、現在、将来目標を記載する項目がある。朝日新聞文化財団による企業の社会貢献度調査の取り組みでは、男女平等や障害者雇用、外国人の雇用率、フェアな職場における社員の個の尊重など、広範な人権課題について調査し、数値化に取り組んでいる。 さらに、ISO(国際標準化機構)が、企業の社会的責任に関する規格化を進めており、2005年にも運用が始まる予定である。日本でも環境基準のISO14000が規格化されることで、この認証を受けた企業とそうでない企業での選別が行われたように、近い将来、「企業の社会的責任」が企業をランク付けする1つの基準になる状況である。したがって今日、人権や多民族共生を含めたCSRを、企業戦略の核心課題に位置づける必要が生まれている。そして各企業の人権部署は、この戦略的課題に関わる重要な役割を担うようになっている。また、機関投資家が「企業の社会的責任」に熱心な企業に投資する「社会的責任投資(SRI)」も増大しており、欧米の年金基金や投資信託がSRIで運用される場合が増大し、米国では全運用資産の12%程度にも達している。日本でも1999年に発売されたエコファンドがヒット商品になり、2003年2月までに9本のSRIファンドが発売され、純資産は700億円を超えている。 このような変化の中で日本企業はどう対応すべきであろうか。何よりも早急に、人権や多民族共生を含めた「企業の社会的責任」への体制を整備し、その取り組みをアピールすべきである。その際、これまで部落問題をはじめとする人権課題に取り組んできた企業こそが、日本のCSRにおいて重要な役割を発揮できるし、先駆的な取り組みを行うべきであろう。部落問題や歴史性をもつ在日コリアンへの差別を許さず、人権・多民族共生の価値観を豊富にする取り組みを主体的に行う企業が続出することを期待している。 甲南大学教員 高
龍 秀(コウ ヨン ス) |