多民族共生人権教育センター
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オピニオン 在日コリアン高齢者の生活と福祉 〜300人の生活実態調査から〜

在日コリアン高齢者の生活と福祉
〜300人の生活実態調査から〜

 私たちは、2003年9月下旬から12月にかけて、大阪市生野区西部の70歳以上の在日コリアン高齢者を対象に、「在日コリアン高齢者生活実態調査」を実施しました。今回の調査は、福祉制度などの利用状況や経済状況、地域社会とのかかわりなどの実態を明らかにするために行われました。日本語の読み書きが困難な在日コリアンの声も多く集めるため、アンケートの郵送調査と調査員が直接家庭訪問をする訪問調査を組み合わせ、郵送調査82人、訪問調査218人、あわせて300人の生活実態を聞くことができました。アンケートやインタビュー調査に快く応じてくださったハラボジ(おじいさん)やハルモニ(おばあさん)に、この場をお借りして厚く御礼を申し上げます。
 大阪市在日コリアンの高齢者に焦点をあてて、2000年介護保険制度実施以降の状況について大量調査が行われたのは、今回が初めてだろうと思います。特に、地域福祉計画が策定され、地域福祉の具体的な推進が求められているなかで、今回の調査結果は重要な意味を持つと思います。
 本調査の主な柱は、(1)基本属性(性別、年齢、家族構成)、(2)経済状況(収入源、暮らし向き、収入額)、(3)識字の状況、(4)楽しみ、生き甲斐、地域生活への参加、(5)困っていること、相談相手、(6)介護保険の利用状況、情報源、(7)介護保険外サービスや在日外国人向けのサービスの利用状況、(8)自由意見、です。

 調査結果からいくつか特徴的な点を紹介したいと思います。第一は、日本語およびハングルの識字の状況です。「日本語の文章を読める」と回答した人は、約4割にとどまりました。なかでも、80歳以上の女性では、6割近くが「日本語、ハングルともに読めない」と回答しています。日本語を「読み上げる」ことができるだけでなく、意味を十分に理解できるかどうかまで厳密に問えば、「日本語の文章が読める」人は、調査結果よりも少なくなると思われます。行政サービスなどのさまざまな情報の伝達方法として、文字媒体にたよらない方法が必要とされていること、高齢者については、ハングルを読むことができる人も少なく、ハングル版のパンフレットを用意しても問題は解決しないことが明らかとなったのではないでしょうか。
 第二に、在日コリアンの地域生活の状況です。日常生活の楽しみとして、「友人宅に遊びに行くこと」「公園で過ごすこと」が上位に挙がりました。しかし、日本人高齢者が利用しているような「老人福祉センター」「老人クラブ」は、ほとんど利用されておらず、在日コリアン高齢者の居場所づくりをどう進めるかが今後の課題として浮かび上がりました。
 第三に、在日コリアン高齢者の経済状況です。調査結果から、無年金者が7割を超えました。現在78歳以上の在日コリアンは、国民年金法に存在していた国籍条項によって制度的に加入できなかった制度的無年金者です。介護保険料の滞納者が、少なくとも14人いましたが、その全員が無年金者でした。また、単身高齢者と高齢夫婦世帯の6割弱が、収入額が生活保護基準を下回っているにも関わらず、生活保護を受けていません。在日コリアン高齢者の多くが、無年金によってきわめて厳しい経済状況にあることが明らかとなりました。

 今回の調査は、問題発見の一契機でもありました。返送されてきたアンケートに、妻を介護している夫の援助を求める切実な声が書かれているのを見つけ、あわてて生野区在宅サービスセンター相談分室のスタッフに連絡を取り、相談に行っていただいたこともありました。
 今回の調査を、在日高齢者施策を進めるうえでの基礎資料として生かしていただきたいと思います。調査結果の詳細については、近日刊行予定の『調査報告書』をぜひご参照ください。

大阪府立大学社会福祉学部専任講師 嵯峨嘉子

 

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